保育所の安全計画は、各年度が始まる前に、安全点検・安全指導・研修と訓練の年間スケジュールを決め、職員に周知して実施し、保護者に知らせ、定期的に見直すものです。児童福祉施設の設備及び運営に関する基準第6条の3で義務づけられており、保育所は令和5年4月1日から最初から義務の対象です。

安全計画は書類を作れば終わりではありません。研修・訓練の実施、保護者への周知、見直しまでが基準で求められ、令和8年7月からは、これらを行っていない場合に公定価格の減算があります。

この記事では、基準の条文、厚生労働省の事務連絡「保育所等における安全計画の策定に関する留意事項等について」(令和4年12月15日)、事故防止ガイドライン、こども家庭庁の事故報告の通知にもとづいて、作り方と運用を整理します。監査での見られ方は保育所の指導監査の準備で扱っています。


1. 基準が求めていること

第6条の3(安全計画の策定等)

内容義務の強さ
第1項設備の安全点検、職員・児童への安全指導(施設外の活動を含む)、職員の研修・訓練などについて計画を策定し、必要な措置を講じる義務
第2項職員に周知し、研修と訓練を定期的に実施する義務
第3項保護者に、安全計画にもとづく取組の内容などを周知する(保育所と児童発達支援センター)義務
第4項定期的に見直し、必要に応じて変更する「ものとする」

義務化の時期

  • 改正は令和4年11月30日の厚生労働省令第159号で、施行は令和5年4月1日です。
  • 附則第2条は、令和6年3月31日まで安全計画を努力義務に読み替えていましたが、括弧書きで「保育所に係るものを除く」としています。保育所は令和5年4月1日から義務です。

関係する条文

条文内容
第6条第2項避難・消火の訓練を少なくとも毎月1回行う
第6条の4自動車の乗車・降車の際に点呼などで所在を確認する。保育所が送迎用の自動車を日常的に運行するときは、見落としを防ぐ装置を備えて降車時に使う
第9条の3感染症と非常災害に備える業務継続計画(努力義務)

2. 安全計画の3本柱

国の事務連絡は、取組を次のように整理しています。

取組の例
① 安全点検設備・遊具・避難経路などを定期的に点検し、文書で記録する。散歩コースや公園など、定期的に使う施設外の場所も点検する。午睡・食事・プール・園外活動・バス送迎の役割分担をマニュアルにし、非常勤を含む全職員で共有する
② 安全指導と保護者への説明子どもへの安全指導を行い、安全計画と取組の内容を保護者に説明する。公表しておくことが望ましい
③ 訓練・研修地域の特性に応じた災害を想定した避難訓練、心肺蘇生法・気道内の異物除去・AED やエピペンの実技講習、不審者対応の訓練、119番通報の訓練を全職員が受ける

あわせて、ヒヤリ・ハットを集めて要因を分析し、再発防止につなげることが示されています。


3. 作り方の手順

  1. 年度が始まる前に、年間の枠を作る:事務連絡の別添4「保育安全計画例」と別添5「保育所等が行う児童の安全確保に関する取組と実施時期例」を下敷きにします。
  2. 点検の対象を洗い出す:園内の設備・遊具・避難経路に加え、散歩コースと定期的に使う公園を一覧にし、点検の月と担当を決めます。
  3. 場面ごとの役割分担を決める:午睡、食事、プール・水遊び、園外活動、送迎バスのそれぞれで、誰が何を見るかを書き出します。
  4. 訓練と研修を月に割り付ける:毎月の避難・消火訓練(第6条第2項)に、救命処置、不審者対応、119番通報の訓練を重ねて割り付けます。
  5. 職員に周知する:非常勤を含む全職員が読める形で共有し、周知した日と方法を記録します。
  6. 保護者に周知する:入園説明会や園だより、掲示などで取組の内容を知らせ、記録を残します。
  7. 実施を記録する:点検表、訓練の記録、研修の受講記録を月ごとに残します。
  8. 見直す:ヒヤリ・ハットや事故、訓練で見つかった課題を踏まえて、年度の途中でも必要なら変更し、次年度の計画に反映します。

年間の割り付けの例(形の例)

時期点検訓練・研修周知・見直し
年度の前年間の点検計画を決める年間の訓練計画を決める計画を職員に周知
年度の初め散歩コース・公園の点検避難・消火訓練、新任職員への役割分担の説明保護者に取組を周知
夏の前プール・水遊びの設備と監視体制の点検心肺蘇生法・119番通報の訓練、プールの役割分担の確認
年度の中ごろ遊具・設備の点検不審者対応の訓練、夜間を想定した訓練上半期のヒヤリ・ハットの振り返り
行事の前行事で使う食材・小物の点検誤嚥時の対応の確認
年度の終わり年間の点検の振り返り計画の見直しと次年度の計画

この表は割り付けの形を示すための例です。毎月の避難・消火訓練は、どの月にも入れます。


4. 場面ごとに押さえること

睡眠

事故防止ガイドライン(平成28年3月)の抜粋として、こども家庭庁の事務連絡(令和6年2月8日・令和8年2月13日)は次を示しています。

  • 医学的な理由でうつぶせ寝を勧められている場合以外は、顔が見える仰向けに寝かせる。何よりも一人にしない
  • やわらかい布団やぬいぐるみを使わない。ヒモやヒモ状のものを置かない
  • 口の中の異物や嘔吐物がないか確かめる
  • 定期的に子どもの呼吸・体位、睡眠状態を点検する

国のガイドラインの抜粋には、確認の間隔の数字は示されていません。間隔を定める場合は、所在地の自治体の通知や指導の内容を確かめてください。

プール・水遊び

こども家庭庁の事務連絡(令和8年5月28日)は、監視する人とプール指導をする人を分けて配置し、役割分担をはっきりさせることを求めています。監視者は監視に専念し、十分な監視体制がとれないときは中止も選択肢にするとされています。心肺蘇生法と119番通報の訓練を事前に行うことも示されています。

食事と誤嚥・アレルギー

  • 国の監査事項は、食事での誤嚥のリスクを除くこと、食物アレルギーは生活管理指導表などにもとづいて対応することを着眼点にしています。
  • こども家庭庁の事務連絡(令和8年1月26日)は、節分行事で炒り大豆を誤嚥し窒息したと考えられる死亡事故が過去に起きていることを挙げ、消費者庁の資料を参照するよう求めています。

送迎バス

  • 乗車・降車の際に点呼などで所在を確認します(第6条の4第1項)。
  • 送迎用の自動車を日常的に運行する保育所は、見落としを防ぐ装置を備え、降車時に使って確認します(同第2項)。運転席の列と、その一つ後ろの前向きの列しか座席がない車などは除かれます。

5. 事故が起きたときの報告

こども家庭庁の通知「教育・保育施設等における事故の報告等について」(令和8年3月30日、令和8年4月1日から運用)の要点です。

項目内容
報告の対象死亡事故、意識不明、治療に30日以上かかる負傷・疾病。令和8年4月から、自動車への置き去り事故が加わった
第1報原則として事故の発生当日(遅くとも翌日)
第2報原則として1か月以内程度
報告のルート(保育所)施設 → 市町村 → 都道府県 → 国

こども家庭庁「令和7年教育・保育施設等における事故報告集計」(令和8年7月公表)では、令和7年の報告は3,130件で、負傷などの3,129件のうち骨折が2,533件(81%)、死亡は1件(放課後児童健全育成事業)でした。認可保育所の負傷などの報告は1,313件で、死亡事故はありませんでした。報告の大半は骨折であり、安全計画の点検と見直しでは、骨折につながった場面の振り返りが欠かせません。

虐待の通告

令和7年の児童福祉法改正で、令和7年10月1日から、保育所などの職員による虐待も通告の義務(第33条の12)の対象になりました。通告したことを理由に解雇その他の不利益な取扱いを受けないことも定められています。安全計画の研修とあわせて、こども家庭庁と文部科学省のガイドライン(令和7年8月改訂、令和8年4月一部改訂)を職員で確かめておきます。


6. 令和8年7月からの減算

こども家庭庁「令和8年度 公定価格・基準等の見直し事項」(令和8年4月)で、「安全計画の策定等をしていない場合」の減算が設けられました。

項目内容
減算額月1,350円
未策定の場合策定した日の属する月まで減算
実施していない場合計画の内容を実施していない状況が1年続いた場合、その翌月から解消した月まで減算
保育所の判断第6条の3の第2項(研修・訓練)、第3項(保護者への周知)、第4項(見直し)ごとに実施の有無を判断

減算そのものの額は大きくありませんが、判断の材料は実施の記録です。研修・訓練の記録、保護者への周知の記録、見直しの記録を残しておくことが、減算の回避と監査の両方につながります。公定価格の加算・減算の全体は公定価格の仕組みで説明しています。


7. チェックリスト

  • 年度が始まる前に、今年度の安全計画を策定した
  • 点検の対象に、散歩コースと定期的に使う公園を含めた
  • 午睡・食事・プール・園外活動・送迎の役割分担をマニュアルにした
  • 非常勤を含む全職員に周知し、記録を残した
  • 保護者に取組の内容を周知し、記録を残した
  • 毎月の避難・消火訓練を計画に入れた
  • 心肺蘇生法、異物除去、AED・エピペン、不審者対応、119番通報の訓練を計画に入れた
  • ヒヤリ・ハットを集めて振り返る仕組みがある
  • 重大事故の報告のルートと期限(第1報は当日、遅くとも翌日)を職員が知っている
  • 年度の終わりに見直し、次年度の計画に反映する日を決めた

8. まとめ

  • 安全計画は基準第6条の3で義務づけられ、保育所は令和5年4月1日から義務の対象
  • 中身は、安全点検・安全指導・研修と訓練の3本柱で、各年度が始まる前に年間スケジュールとして定める
  • 職員への周知、保護者への周知、定期的な見直しまでが求められる
  • 令和8年7月から、策定や実施をしていない場合に月1,350円の減算があり、判断の材料は実施の記録

参考資料