保育所の処遇改善等加算は、令和7年度から、旧加算Ⅰ・Ⅱ・Ⅲが「区分1(基礎分)」「区分2(賃金改善分)」「区分3(質の向上分)」の3つに一本化されました。 根拠は、こども家庭庁成育局長と文部科学省初等中等教育局長の連名通知「施設型給付費等に係る処遇改善等加算について」(令和7年4月11日、こ成保296・7文科初第250号。最終改正 令和8年4月8日)です。

令和8年度に特に注意が必要なのは、区分3の研修修了要件が本来の形で適用される年度だという点です。令和7年度に限り認められていた経過措置は、令和8年4月1日時点で研修を修了していない職員には使えません。また、こども家庭庁のFAQでは、令和8年度からはキャリアパス要件を満たしていない施設は区分1の認定を受けられないとしています。

この記事では、通知・説明資料・FAQ(第7版、令和8年5月15日時点)にもとづいて、区分ごとの要件と申請から実績報告までの流れを整理します。公定価格全体の中での位置づけは公定価格の仕組みで説明しています。申請の締切日は市町村(または都道府県)が定めるので、所在地の案内で必ず確かめてください。


1. 一本化後の3つの区分

区分名称旧制度との対応性格
区分1基礎分旧加算Ⅰの基礎分平均経験年数に応じた加算率
区分2賃金改善分旧加算Ⅰの賃金改善要件分と旧加算Ⅲを統合賃金改善に充てる分
区分3質の向上分旧加算Ⅱ副主任保育士・リーダーなどの研修修了者への配分

旧加算Ⅰ・Ⅱ・Ⅲの時代は、加算ごとに通知・様式・FAQが分かれていました。一本化に伴い、旧通知(令和5年6月7日)は廃止され、旧「処遇改善等加算Ⅱに関するFAQ」も令和8年4月8日に廃止されています。古い資料で要件を確かめないよう注意してください。


2. 区分1(基礎分):キャリアパス要件と加算率

キャリアパス要件

区分1の認定を受けるには、次の2つを満たす必要があります。

  1. 職位・職責などに応じた勤務条件と賃金体系を、就業規則などで書面にし、全職員に周知していること
  2. 資質向上の計画をつくって研修を行い、資格の取得を支援していること

区分3の適用を受けている場合は、キャリアパス要件を満たしたものとされます。

加算率は平均経験年数で決まる

区分1と区分2の加算率は、職員の平均経験年数で決まります。平均経験年数は、常勤職員について通算し、4月1日時点で数えます。

平均経験年数区分1区分2
11年以上12%7%+(c)
10年以上11年未満12%6%+(c)
9年以上10年未満11%6%+(c)
8年以上9年未満10%6%+(c)
7年以上8年未満9%6%+(c)
6年以上7年未満8%6%+(c)
5年以上6年未満7%6%+(c)
4年以上5年未満6%6%+(c)
3年以上4年未満5%6%+(c)
2年以上3年未満4%6%+(c)
1年以上2年未満3%6%+(c)
1年未満2%6%+(c)

(c)は、こども家庭庁の説明資料「施設型給付費等に係る処遇改善等加算について(令和7年度以降)」で、公定価格上の職員1人あたり月9,000円に相当する率と説明されているものです。値は定員区分ごとに告示の別表で定められています。

区分1の率のうち2%は、管理費として積算されています(説明資料と「令和8年度における私立保育所の運営に要する費用について」による)。区分1の加算額のすべてが人件費に充てる前提ではない点を押さえておくと、配分の計画が立てやすくなります。

平均経験年数は加算率を直接左右します。どの経験を通算の対象にできるかは通知と FAQ で定められているので、職員ごとの経験年数の根拠となる書類をそろえ、市町村の審査に耐える形で管理しておきます。


3. 区分2(賃金改善分):賃金改善の要件

区分2と区分3には、共通して次の要件があります。

要件内容
改善額の総額改善等見込総額が、加算見込額を下回らないこと
改善の方法改善額の1/2以上を、基本給または毎月決まって支払われる手当で改善すること
人件費の改定分人件費の増額改定分は、追加で支払うこと
賃金水準の維持加算の影響を除いた賃金総額が、基準年度を下回らないこと(下回る場合は、別紙様式7「特別な事情に係る届出書」を出す)
周知賃金改善の内容を職員に周知すること

賞与や一時金だけで改善するのではなく、半分以上を基本給か毎月の手当で改善する必要があります。年度末に残額を一時金で精算する運用をとる場合も、この割合を満たしているかを計画の段階で確かめておきます。

区分2の一部は、同じ法人が運営する他の施設の賃金改善に充てることができます。法人内で配分を調整する場合は、その内容を計画書と実績報告書に反映させます。


4. 区分3(質の向上分):研修修了者への配分

対象者と改善額

区分対象者改善額(月額)人数
区分3-①副主任保育士・専門リーダー(経験おおむね7年以上、研修修了)、園長以外の管理職(研修修了)など4万円以内人数A=基礎職員数×1/3 と研修修了者数の少ない方
区分3-②職務分野別リーダー(経験おおむね3年以上、6分野のいずれかを担当、研修修了)原則5千円(最も低い副主任の額までの範囲で、5千円以上4万円未満も可)人数B=基礎職員数×1/5 と研修修了者数の少ない方

保育所の基礎職員数には、定員に応じた数(定員20人=1.5、21〜40人=1.9、41〜90人=2.5、91〜150人=2.3、151人以上=3.3)を加えます。告示の別表第2では、区分3の額を「49,060円×人数A+6,130円×人数B」とし、各月初日の利用子ども数で割って単価に加算することとしています。

研修修了要件(令和8年度から本来の形で適用)

研修修了要件は、「施設型給付費等に係る処遇改善等加算(区分3)に係る研修修了要件について」(令和7年9月16日、こ成基202・7初幼教第4号)で定められています。保育所で求められる研修は次のとおりです。研修の中身は、保育士等キャリアアップ研修ガイドラインに沿った1分野15時間以上の研修です。

役職修了すべき研修
副主任保育士専門分野別研修の3分野以上+マネジメント研修
専門リーダー専門分野別研修の4分野以上
職務分野別リーダー担当する職務分野を含む1分野以上

副主任保育士・専門リーダーなどの修了要件は令和8年度から適用されます。令和7年度に限っては、3分野以上で足りるとされていました。

経過措置の終了に注意

処遇改善等加算FAQ第7版(令和8年5月15日時点)では、令和6年度に旧加算Ⅱを算定していた施設について、令和7年度に限り、令和7年4月時点で在籍していた職員は修了見込みでも人数Aの「研修修了者」に数えてよいとしていました。令和8年4月1日時点で修了していない職員は、令和8年度の人数Aに含めることはできません。

加算を取れるかどうかは、その年度の4月1日時点の研修修了者数で判断します(年度の途中で要件を満たした場合は、翌月から)。一方で、賃金改善を配分する相手には、年度内に修了する予定で、研修計画に受講が明記され、本人に知らされていて、副主任保育士等に準ずる職位や職務命令を受けている「修了見込み」の職員も含められます。

同じFAQでは、修了見込みで賃金を改善した職員が年度内に修了できなかった場合、返還までは求めないものの翌年度に速やかに修了することとし、合理的な理由なく修了しないまま配分を続けると返還措置に当たりうるとしています。


5. 申請から実績報告までの流れ

認定する主体

施設の所在地認定する者書類の提出先
指定都市・中核市・特定市町村その市長その市長が定める日までに市へ
その他の市町村都道府県知事(市町村が取りまとめ)知事が定める日までに市町村へ

提出する書類

区分主な書類
区分1様式1(加算率等認定申請書)、様式2(キャリアパス要件届出書)、資質向上の計画
区分2区分1の書類に加え、様式4(賃金改善計画書)、様式4別添1(明細書)、見込平均利用子ども数の算出方法
区分3さらに様式3(加算算定対象人数等認定申請書)

前年度に同じ区分の認定を受けていれば、様式5「賃金改善の誓約書」を出すことで、様式4などを省略できます。

年間の流れ

  1. 年度初め:4月1日時点の平均経験年数と研修修了者数を確定し、加算率と人数A・人数Bを見込む
  2. 申請:市町村(または都道府県)が定める日までに、様式1〜4などを提出する
  3. 賃金改善の実施:改善を始める月から、最初に来る3月までが実施期間
  4. 職員への周知:賃金改善の内容を職員に伝える
  5. 実績報告:翌年度に速やかに、様式6(賃金改善実績報告書)を市町村長に提出する
  6. 書類の保管:帳簿と証拠書類は、実績報告の後5年間保管する

虚偽の申請や報告があった場合は、返還の措置がとられます。

令和8年度からは、こども家庭庁の「保育業務施設管理プラットフォーム」が本格稼働し、処遇改善等加算などの加算認定の申請・審査の機能が入るとされています(こども家庭庁「基礎資料(保育DXの推進による業務改善)」令和8年3月版)。所在地の市町村がプラットフォームを使うかどうかで提出の方法が変わるため、市町村の案内を確かめてください。


6. 実務のチェックリスト

  • 就業規則・賃金規程に、職位・職責に応じた賃金体系が書かれ、全職員に周知している
  • 資質向上の計画(研修計画)を作成し、研修の実施記録がある
  • 職員ごとの経験年数を、通知と FAQ の数え方に沿って、根拠となる書類で確かめている
  • 4月1日時点の研修修了者を、修了証で確かめている(修了見込みの職員とは分けて管理している)
  • 区分3の対象者の職位・職務命令を、辞令などで書面にしている
  • 改善額の1/2以上を、基本給または毎月決まって支払う手当で改善している
  • 加算の影響を除いた賃金総額が、基準年度を下回っていない
  • 実績報告の提出日を、市町村の案内で確かめて予定に入れている

7. 落とし穴

  • 旧制度の資料で要件を確かめる:旧加算Ⅱの通知・FAQは廃止されています。現行の通知・説明資料・FAQ第7版で確かめてください。
  • 修了見込みの職員を人数Aに数え続ける:令和8年度は、4月1日時点で修了していない職員を人数Aに数えられません。
  • 賃金改善を一時金に寄せすぎる:改善額の1/2以上は、基本給か毎月の手当で改善する必要があります。
  • 法人内の他施設への配分を記録しない:区分2の一部を他施設に充てる場合は、計画書と実績報告書で整合させます。
  • 証拠書類を早く捨てる:帳簿と証拠書類は、実績報告の後5年間保管します。

8. まとめ

  • 令和7年度から、処遇改善等加算は区分1(基礎分)・区分2(賃金改善分)・区分3(質の向上分)に一本化された
  • 区分1・区分2の加算率は平均経験年数で決まり、区分1にはキャリアパス要件がある
  • 区分2・区分3の賃金改善は、改善額の1/2以上を基本給か毎月の手当で行う
  • 区分3の研修修了要件は令和8年度から本来の形で適用され、令和7年度の経過措置は終わっている
  • 実績報告は翌年度に速やかに提出し、証拠書類は5年間保管する

参考資料