保育の ICT 化は、登降園管理・保護者との連絡・保育に関する計画と記録・キャッシュレス決済の4機能を軸に進めると、国の補助と加算の要件に沿って整理できます。こども家庭庁の「保育所等におけるICT化推進等事業」はこの4機能を補助の対象にしており、令和8年度に公定価格で創設された「保育ICT推進加算」も、4機能すべての活用を要件にしています。

こども家庭庁の資料では、保育所等の ICT 導入率は令和6年度で99.0%ですが、4機能すべてを入れている施設の割合を令和8年度に20%以上にすることが目標とされています。つまり、何らかのシステムは入っているが、紙と併用している園が多いのが現状です。

この記事では、こども家庭庁の資料にもとづいて、補助と加算の要件、置き換えの手順、記録を電子で残すときの注意を整理します。加算の全体像は公定価格の仕組み、収支への影響の見方は保育所の収支の見方で扱っています。


1. 国が想定している4つの機能

機能置き換える紙の業務
登降園管理登降園の記録簿、延長保育の時間の集計
保護者との連絡紙の連絡帳、お便り、欠席連絡の電話
保育に関する計画・記録指導計画、保育日誌、児童票、午睡や健康観察の記録
キャッシュレス決済実費徴収(教材費・行事費など)の現金の受け渡し

こども家庭庁「基礎資料(保育DXの推進による業務改善)」(令和8年3月版)は、東京都内の事業者を対象にした令和2年の調査を引用し、保育士の事務系業務は月平均63時間で、業務時間全体の33%を占めるとしています。また、「基礎資料(保育人材の確保のための総合的な対策)」(令和8年3月版)では、非効率な事務作業や紙の業務のせいで子どもと向き合う時間が取れないという意見があることが、課題として挙げられています。


2. 導入費の補助:保育所等におけるICT化推進等事業

補助基準額(1施設あたり)

導入する機能の数システムのみ端末の購入なども合わせる場合
1機能20万円70万円
2機能40万円90万円
3機能60万円110万円
4機能80万円130万円

外国人の保護者とのやりとりに使う通訳・翻訳機器は、1施設あたり15万円です。

補助率と対象

  • 補助率は、国1/2・市区町村1/4・事業者1/4
  • 自治体が、自治体・ICT事業者・保育事業者などでつくる協議会を置き、導入費の補助以外の取組も行っている場合は、国2/3・市区町村1/12・事業者1/4
  • 対象は財政力指数1.0未満の自治体。ただし登降園管理の機能を入れる場合に限り、特別区と財政力指数1.0以上の自治体も対象
  • 1施設1回まで。ただし、新たにキャッシュレス決済の機能を入れる場合と、保育業務施設管理プラットフォームを入れている施設が新たに登降園管理の機能を入れる場合は、過去に補助を受けていても対象

令和8年度に使う分は、令和7年度補正予算(13億円)で措置されています。市区町村が負担する仕組みなので、所在地の市区町村がこの事業を実施しているか、受付の時期はいつかを最初に確かめてください。


3. 令和8年度の保育ICT推進加算

令和8年度の公定価格で、保育ICT推進加算が創設されました(こども家庭庁「令和8年度公定価格・基準等の見直し事項」)。

項目内容
保育所・幼稚園・認定こども園は年30万円、地域型保育事業は18万円(3月初日の利用子ども数で割って単価に加算)
体制ICT活用の責任者を置く(複数人のチームで取り組むことが前提)
要件14機能(登降園管理、保護者との連絡、保育に関する計画・記録、キャッシュレス決済)のICTを業務で使う
要件2給付・監査で「保育業務施設管理プラットフォーム」を使う
要件3入所の調整などで「保活情報連携基盤」を使う
算定できない場合ここdeサーチの情報を最新にしていない施設(9月末までに更新するか「更新なし」の処理をする)、同じ年度にICT化推進等事業の補助でシステムを入れた施設

要件2・3は、令和8年度に限り、アカウントの発行を受けていて令和9年度以降に使う予定であれば算定できるとされています。

同じ年度に補助と加算を両方受けることはできません。 4機能のうち未導入の機能があるなら、補助で導入する年度と、加算を算定する年度を分けて計画します。

1歳児配置改善加算の ICT 要件

令和7年度に創設された1歳児配置改善加算(1歳児5:1配置)でも、登降園管理と、それ以外の機能1つ以上の ICT を使っていることが要件の1つです。ほかに、処遇改善等加算の区分1〜3をすべて取っていること、平均経験年数10年以上が要件になっています。


4. 国が整える基盤:プラットフォームと保活情報連携基盤

基盤内容(こども家庭庁資料)
保育業務施設管理プラットフォーム令和8年度から本格稼働。施設型給付の請求・精算、処遇改善等加算などの加算認定の申請・審査、請求額のシミュレーション、監査の実施計画・通知・監査書類のオンライン送付。令和9年度には広域請求、延長保育の実績報告、監査調書の入力・審査などが予定されている
保活情報連携基盤保活の情報収集、施設の見学予約、就労証明書の発行などをオンラインでまとめて行う基盤。保護者向けサイト「保活ワンポータル」がある

プラットフォームは、令和8年2月時点で40都道府県・416市区町村が令和8年度から使い始める予定とされています。園が使うシステムを選ぶときは、市区町村がどの基盤を使うかを確かめ、請求や監査の書類とつながる運用ができるかを見ておくと、二重入力を避けられます。


5. 置き換えの手順

  1. 今の紙の業務を棚卸しする:登降園、連絡帳、指導計画、日誌、児童票、午睡・健康観察、実費徴収について、誰がいつ何に書いているかを一覧にします。
  2. 置き換える順番を決める:保護者も使う機能(登降園・連絡)は周知に時間がかかるため、職員だけで完結する機能(計画・記録)と分けて進めます。
  3. 市区町村の補助と加算の予定を確かめる:補助の受付時期、プラットフォームと保活情報連携基盤の利用予定を確かめ、補助の年度と加算の年度を決めます。
  4. システムを比べる:4機能のうちどれに対応しているか、データの書き出しができるか、端末の台数、保護者側の操作を確かめます。
  5. 並行運用の期間を決める:紙とシステムを並行させる期間と、紙をやめる日を先に決めます。並行が長引くと、記録が二重になって負担が増えます。
  6. 記録の様式を合わせる:指導計画や日誌の項目を、保育所保育指針の「指導計画の作成」「保育内容等の評価」に沿った形でシステムに設定します。
  7. 保護者に周知する:連絡の方法が変わる日、欠席連絡の方法、紙の連絡帳の扱いを文書で知らせます。
  8. 運用を見直す:導入の数か月後に、残っている紙の業務と、入力の手間を確かめます。

6. 記録を電子で残すときの注意

  • 保存期間:特定教育・保育施設及び特定地域型保育事業並びに特定子ども・子育て支援施設等の運営に関する基準(平成26年内閣府令第39号)第34条第2項は、教育・保育の提供に当たっての計画、提供の記録、市町村への通知に係る記録、苦情の内容等の記録、事故の状況と処置の記録を、その完結の日から5年間保存することとしています。システムを乗り換えるときも、この期間の記録を読める形で残す必要があります。
  • 帳簿の整備:児童福祉施設の設備及び運営に関する基準第14条は、職員、財産、収支、入所している者の処遇の状況を明らかにする帳簿の整備を求めています。
  • 保育要録:「保育所保育指針の適用に際しての留意事項について」(平成30年3月30日 子保発0330第2号)で、保育所児童保育要録を ICT で作成・送付・保存することは現行の制度上も可能とされています。
  • 書き出しの確認:契約を終えたときにデータを書き出せるか、形式は何かを契約前に確かめます。
  • 個人情報の扱い:子どもの健康状態や家庭の状況を扱うため、職員ごとの閲覧権限、端末の紛失時の対応、園外への持ち出しのルールを決めます。

チェックリスト

  • 4機能のうち、導入済みの機能と未導入の機能を一覧にした
  • 市区町村が ICT 化推進等事業を実施しているか、受付時期を確かめた
  • 補助を受ける年度と、保育ICT推進加算を算定する年度を分けて計画した
  • ここdeサーチの情報を9月末までに更新する担当を決めた
  • 記録の保存期間(完結から5年)を満たす保存の方法を決めた
  • 紙をやめる日と、保護者への周知の方法を決めた

7. まとめ

  • 国の補助と加算は、登降園管理・保護者との連絡・計画と記録・キャッシュレス決済の4機能が軸
  • ICT化推進等事業の補助基準額は、システムのみで1機能20万円〜4機能80万円、補助率は原則 国1/2・市区町村1/4・事業者1/4
  • 令和8年度の保育ICT推進加算は年30万円(保育所)。同じ年度に補助でシステムを入れた施設は算定できない
  • 記録は完結の日から5年間保存する。システムの乗り換えでも読める形で残す

参考資料