保育所の収入の大部分を占める公定価格は、「基本分単価」に「加算」と「減算・調整」を重ねて、子ども1人あたりの月額として算定します。 基本分単価は、施設の所在地(地域区分)、利用定員(定員区分)、認定区分、年齢区分、保育必要量区分の5つの組み合わせで決まり、そこに処遇改善等加算や配置改善の加算、主任保育士専任加算などが上乗せされます。
公定価格の根拠は、子ども・子育て支援法第27条と、内閣総理大臣が定める告示です。私立保育所の場合は、同法附則第6条により、施設型給付費ではなく委託費として市町村から支払われます。
令和8年度は、保育ICT推進加算の創設、療育支援加算の見直し、安全計画や経営情報の報告をしていない場合の減算の創設など、見直しの項目が多い年です。この記事では、こども家庭庁が公表している告示・通知と「令和8年度公定価格・基準等の見直し事項」(令和8年4月)にもとづいて、公定価格の読み方を整理します。単価の具体的な金額は、毎年度の告示と市町村の資料で必ず確かめてください。
1. 公定価格の法的な根拠
子ども・子育て支援法第27条
子ども・子育て支援法第27条第1項は、保護者が特定教育・保育施設で教育・保育を受けたときに、市町村が施設型給付費を支給すると定めています。額は同条第3項で、次のように決まります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 第1号の額 | 子どもの区分・保育必要量・施設の所在地域などを勘案して、内閣総理大臣が定める基準により算定した費用の額(現に要した費用の額を超えるときは、その費用の額) |
| 第2号の額 | 利用者負担の額(政令で定める額を限度に、世帯の所得の状況などを勘案して市町村が定める) |
| 支給額 | 第1号の額 − 第2号の額(零を下回るときは零) |
この「第1号の額」が、一般に公定価格と呼ばれているものです。基準を定めたり変えたりするときは、内閣総理大臣が文部科学大臣に協議し、こども家庭審議会の意見を聴くことになっています(同条第4項)。
私立保育所は「委託費」
私立保育所については、同法附則第6条第1項により、市町村が当分の間、第27条第3項第1号の基準で算定した額(保育費用)を委託費として保育所に支払います。この場合、第27条は適用しません。保育料は、市町村長が保護者または扶養義務者から徴収します(附則第6条第4項)。
| 施設 | 支払われるもの | 保育料(利用者負担)の受け取り |
|---|---|---|
| 私立保育所 | 委託費(附則第6条) | 市町村が徴収 |
| 認定こども園・幼稚園(施設型給付を受ける園) | 施設型給付費(第27条) | 施設が受け取る(市町村は差し引いた額を法定代理受領で支払う) |
算定の基準となる告示
公定価格の基準は、平成27年内閣府告示第49号「特定教育・保育、特別利用保育、特別利用教育、特定地域型保育、特別利用地域型保育、特定利用地域型保育及び特例保育に要する費用の額の算定に関する基準等」です。令和5年12月以降の改正はこども家庭庁告示で行われており、令和8年度の単価は令和8年こども家庭庁告示第9号(令和8年4月8日)による改正を反映したものです。
加算の要件の細部は、告示ではなく「特定教育・保育等に要する費用の額の算定に関する基準等の実施上の留意事項について」(令和5年5月19日、こ成保38・5文科初第483号。最終改正 令和8年4月8日)に書かれています。単価は告示、要件は留意事項通知と覚えておくと、資料を探しやすくなります。
2. 単価を決める5つの区分
保育所の基本分単価は、告示の別表第2で、次の区分の組み合わせごとに定められています。
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| 地域区分 | 20/100・16/100・15/100・12/100・10/100・6/100・3/100・その他地域の8区分(別表第1) |
| 定員区分 | 20人/21〜60人は5人刻み/61〜170人は10人刻み/171人以上 |
| 認定区分 | 2号・3号 |
| 年齢区分 | 4歳以上児・3歳児・1、2歳児・乳児 |
| 保育必要量区分 | 標準時間・短時間 |
地域区分は、人件費の地域差を反映するためのものです。別表第1では、たとえば大阪市・横浜市が16/100、名古屋市が15/100、京都市・大津市・福岡市が10/100、札幌市が3/100に区分されています(地名は令和6年4月1日時点の名称)。こども家庭庁は、地域区分について令和8年4月の見直しは行わず、令和9年度に向けて検討するとしています。
定員区分は、利用定員で決まります。定員が小さいほど子ども1人あたりの単価は高くなる仕組みで、令和7年度には定員60人以下の区分が細かくされました。在籍児の数ではなく利用定員で区分が決まるため、定員と在籍が大きく離れていると、収支の見通しを誤りやすくなります。
3. 公定価格の構成
留意事項通知の別紙2(保育所)では、公定価格の構成を次の5つに分けています。
| 部分 | 主な項目(令和8年度) |
|---|---|
| 基本分単価 | 年齢別の配置基準による保育士、定員90人以下の施設の+1人、標準時間認定に対応する+1人、研修代替の年3日分、施設長、調理員、非常勤事務職員、嘱託医・嘱託歯科医など |
| 基本加算部分 | 処遇改善等加算、3歳児配置改善加算、4歳以上児配置改善加算、1歳児配置改善加算、休日保育加算、夜間保育加算、減価償却費加算、賃借料加算、チーム保育推進加算、副食費徴収免除加算 |
| 加減調整部分 | 分園の場合、施設長を配置していない場合、土曜日に閉所する場合、安全計画の策定等をしていない場合、経営情報の報告等を行っていない場合 |
| 乗除調整部分 | 定員を恒常的に超過する場合 |
| 特定加算部分 | 主任保育士専任加算、療育支援加算、事務職員雇上費加算、冷暖房費加算、除雪費加算、降灰除去費加算、高齢者等活躍促進加算、施設機能強化推進費加算、小学校接続加算、栄養管理加算、第三者評価受審加算、特別地域保育体制確保対応加算、保育ICT推進加算 |
特定加算部分には、各月の初日の利用子ども数で割って毎月の単価に加えるもの(主任保育士専任加算など)と、3月初日の利用子ども数で割って3月の単価に加えるもの(施設機能強化推進費加算、第三者評価受審加算、保育ICT推進加算など)があります。年1回の加算は3月にまとめて入るため、月次の収支を見るときは3月の入金が大きくなることを見込んでおきます。
基本分単価に含まれる人件費の水準
基本分単価の中の人件費は、国家公務員の給与に準じて積算されています。こども家庭庁の「令和8年度における私立保育所の運営に要する費用について」(こ成保第536号、令和8年7月31日)では、職種ごとの本俸基準額を次のように示しています。
| 職種 | 本俸基準額(月額) | 特殊業務手当 |
|---|---|---|
| 所長 | 294,200円 | ― |
| 主任保育士 | 286,416円 | 9,300円 |
| 保育士 | 254,694円 | 7,800円 |
| 調理員等 | 228,800円 | ― |
同じ通知では、手当などを含めた保育士1人あたりの人件費の年額を、全国平均で491万円、地域区分20/100の地域で548万円、その他地域で458万円としています(いずれも処遇改善等加算の区分1〜3を含まない額)。通知には、この額を理由に給与水準を下げるのは適切でない旨の注記があります。
4. 令和8年度の主な見直し
こども家庭庁「令和8年度公定価格・基準等の見直し事項」(令和8年4月)から、保育所に関係の深い項目を抜き出します。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 処遇改善 | 令和7年人事院勧告にもとづく+5.3%。令和7年度補正予算で措置した改善を引き続き確保 |
| 保育ICT推進加算の創設 | 保育所などは30万円(3月初日の利用子ども数で割る)。登降園管理・保護者連絡・計画と記録・キャッシュレス決済の4機能、保育業務施設管理プラットフォーム、保活情報連携基盤、ここdeサーチの情報の更新が要件 |
| 施設機能強化推進費加算の充実 | 保育所は限度額20万円に(従来は一律16万円)。複数事業を実施する要件は廃止 |
| 療育支援加算の見直し | 専門職を活用する区分C(月90時間以上)・D(月60時間以上)を新設 |
| 安全計画の策定等をしていない場合の減算 | 令和8年7月から、月1,350円 |
| 経営情報の報告等を行っていない場合の減算 | 令和8年7月から、基本分単価の5%(報告期限から3か月以上たっても報告がない場合) |
| 年齢別配置基準を下回る場合の減算 | 月の15日以降の退職などの場合は、翌々月から減算 |
| 定員21〜40人の保育所の調理員 | 2人で算定(うち1人は非常勤、週5日・1日4時間分) |
| 3歳児の配置基準(15:1)の経過措置 | 令和10年3月31日まで |
| 複数事業等の実施要件 | 主任保育士専任加算などの要件に、乳児等通園支援事業を追加 |
このほか、令和7年度には処遇改善等加算の一本化(旧加算Ⅰ・Ⅱ・Ⅲを区分1〜3に再編)と、1歳児配置改善加算の創設が行われています。処遇改善等加算の区分と申請の流れは、別の記事で詳しく扱います。
経営情報の報告は、子ども・子育て支援法第58条第2項により、毎事業年度の終了後5か月以内に都道府県知事へ行うものです。報告の漏れが減算に直結するようになったため、決算の手続きと一緒に予定に入れておく必要があります。
5. 自園の公定価格を確かめる手順
- 地域区分を確かめる:告示の別表第1で、施設の所在地がどの区分に当たるかを見ます。
- 利用定員と定員区分を確かめる:市町村の確認を受けた利用定員が、別表第2のどの区分に入るかを見ます。認可定員ではなく利用定員で見ます。
- 年齢別・認定別の在籍を並べる:各月初日の在籍を、2号・3号、年齢区分、標準時間・短時間に分けて集計します。
- 基本分単価を当てはめる:区分ごとの単価に人数を掛けます。市町村が単価表を配布している場合は、それを使うと確実です。
- 算定している加算を一覧にする:加算ごとに、算定の根拠(体制届・配置の記録・実施した事業の記録)がそろっているかを確かめます。
- 減算・調整に当たる項目がないかを見る:施設長の配置、土曜日の閉所、安全計画、経営情報の報告、定員の恒常的な超過を確かめます。
- 3月に入る加算を別に見込む:年1回の加算は、年間の収支の見通しに入れておきます。
確認のチェックリスト
- 市町村から届く単価の通知(または支払明細)と、自園の計算が一致している
- 加算の申請書類(加算適用申請書)を、市町村の定める期限までに出している
- 1歳児・3歳児・4歳以上児の配置改善加算を取る場合、各月の配置の記録がある
- 主任保育士が1か月を超えてクラス担当を兼ねていない(主任保育士専任加算を取る場合)
- 安全計画を策定し、見直しの記録がある
- 経営情報の報告を、事業年度の終了後5か月以内に済ませた
- 12月末が申請期限の加算(高齢者等活躍促進加算、施設機能強化推進費加算、第三者評価受審加算など)の申請予定を立てている
6. 落とし穴
- 認可定員と利用定員を取り違える:公定価格の定員区分は、市町村の確認を受けた利用定員で決まります。
- 加算の要件を年度途中で満たさなくなる:職員の退職で配置を満たせなくなると、加算が取れなくなったり、減算がかかったりします。令和8年度からは、月の15日以降の退職などは翌々月から減算する扱いになりました。退職の予定が分かった時点で、配置の見通しを立て直してください。
- 3月の入金を通常月と同じに見る:3月初日の利用子ども数で割る加算がまとめて入るため、月次の比較では3月が突出します。
- 地域区分の変更を見落とす:地域区分は将来見直される予定です。令和9年度に向けた検討の結果は、こども家庭庁の公表を確かめてください。
- FAQ を確認しない:公定価格に関する FAQ は改訂が重ねられており、令和8年8月時点で第32版です。解釈に迷う点は、まず最新の FAQ で確かめます。
7. まとめ
- 公定価格は、子ども・子育て支援法第27条と平成27年内閣府告示第49号にもとづく。私立保育所には附則第6条により委託費として支払われる
- 基本分単価は、地域区分・定員区分・認定区分・年齢区分・保育必要量区分の組み合わせで決まる
- 公定価格は、基本分単価・基本加算部分・加減調整部分・乗除調整部分・特定加算部分で構成される
- 令和8年度は、保育ICT推進加算の創設と、安全計画・経営情報の報告にかかる減算の創設(令和8年7月から)に特に注意する
単価の額と加算の要件は年度ごとに変わります。算定の前に、こども家庭庁の最新の告示・通知・FAQ と、市町村の案内を確かめてください。
参考資料
- 子ども・子育て支援法(平成24年法律第65号)(e-Gov 法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/424AC0000000065
- こども家庭庁「子ども・子育て支援制度」(公定価格・FAQ・通知の掲載ページ): https://www.cfa.go.jp/policies/kokoseido
- こども家庭庁「法令・通知等(政省令・告示)」: https://www.cfa.go.jp/policies/kokoseido/law/law
- こども家庭庁「令和8年度公定価格・基準等の見直し事項」(令和8年4月): https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/3a1576c7-071d-4325-8be8-edced6d12ee1/330bfaef/20260409_policies_kokoseido_178.pdf
- こども家庭庁「令和8年度における私立保育所の運営に要する費用について」(こ成保第536号、令和8年7月31日): https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/3a1576c7-071d-4325-8be8-edced6d12ee1/d2fbc138/20260803_policies_kokoseido_206.pdf
- こども家庭庁「特定教育・保育等に要する費用の額の算定に関する基準等の実施上の留意事項について」(改正後全文): https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/3a1576c7-071d-4325-8be8-edced6d12ee1/29277d03/20260727_policies_kokoseido_202.pdf