認可保育所の園児募集は、「園が子どもを選ぶ」のではなく「保護者に希望先として選ばれる」ための取組です。2号・3号の子どもの入園は市町村の利用調整で決まり、園が直接決めることはできません。園ができるのは、保護者が申込みの前に目にする情報と、見学の受け方を整えることです。

保護者が情報を得る場所は、国の仕組みの中で整ってきています。施設ごとの情報は ここdeサーチに載り、令和7年4月からは人件費の割合やモデル給与も公表されるようになりました。令和8年度からは、見学予約や入所の空き枠をオンラインで扱う保活情報連携基盤(保護者向けは「保活ワンポータル」)の運用が始まっています。

この記事では、児童福祉法、子ども・子育て支援法、こども家庭庁の資料、WAM のリサーチレポートにもとづいて、入園の仕組み、需要の動き、園が整えることを順に整理します。


1. 入園が決まる仕組み

市町村の利用調整

条文内容
児童福祉法第24条第1項保育を必要とする子どもを、市町村が保育所で保育しなければならない
同第24条第3項市町村は、保育所・認定こども園・家庭的保育事業等の利用について調整を行い、利用の要請を行う
同附則第73条第1項第24条第3項の「不足し、又は不足するおそれがある場合」という条件を、当分の間、外して読み替える。つまり市町村は条件なしに利用調整を行う
同第46条の2第2項保育所などは、市町村の調整と要請にできる限り協力しなければならない

認定の区分(子ども・子育て支援法第19条・第20条)

区分対象申込み
1号満3歳以上(2号に当たる子どもを除く)保護者が施設に直接申し込む。市町村の利用調整の対象ではない
2号満3歳以上で、保護者の就労などにより家庭で保育を受けることが難しい子ども市町村に申し込み、市町村が利用調整を行う
3号満3歳未満で、2号と同じ事由がある子ども同上

市町村は、認定の申請から30日以内に処分を行います(第20条)。こども家庭庁の「よくわかる子ども・子育て支援新制度」も、1号は「幼稚園などの施設に直接申し込み」、2号・3号は「市町村が利用調整をします」と説明しています。

施設の種類ごとの契約

施設契約の形
私立保育所市町村と保護者の契約。市町村が園に委託費を支払い、保育料は市町村長が徴収する(子ども・子育て支援法附則第6条)
認定こども園・公立保育所・地域型保育市町村の調整のもとで、施設・事業者と保護者が契約する
企業主導型保育市区町村の関与なく、施設と保護者が直接契約する(地域枠の設定も自由。内閣府の資料)

園が守るべきこと

子ども・子育て支援法第33条により、特定教育・保育施設は、利用の申込みを正当な理由なく拒んではならず、申込みが利用定員を超えるときは公正な方法で選考しなければなりません。1号の子どもを直接受け付けるこども園でも、この原則は同じです。


2. 需要の動き

こども家庭庁「保育所等関連状況取りまとめ(令和8年4月1日)」(熊本県内のデータは暫定値)によると、次のとおりです。

項目令和8年4月1日
保育所等の定員3,016,417人(前年比▲12,865人)
利用児童数2,646,756人(前年比▲31,661人)
定員充足率(全国)87.7%
申込者数2,729,681人
待機児童数2,435人(前年比+181人)

定員充足率は、令和4年4月の89.7%から毎年下がっています。申込者数は令和2年の2,842,208人が最も多く、その後は減り続けています。過疎地域の定員充足率は、令和3年4月の81.3%から令和8年4月の72.7%へ、5年で8.6ポイント下がりました。

市区町村の実施計画を集計した見込みでは、2025年から2029年の5年間で申込者数が約9.5万人減る一方、利用定員は約3千人分増える計画です。厚生労働省の人口動態統計(令和7年の概数)では、出生数は671,236人で過去最少でした。

多くの地域で、定員に対して申込みが少ない状況に移っています。募集の取組は、待機児童が多かった時期には意識されにくかったものですが、いまは収支に直結します。

利用率と収支

WAM のリサーチレポート「2024年度 保育所・幼保連携型認定こども園の経営状況について」(令和8年3月27日)では、保育所の黒字施設の利用率が97.9%、赤字施設が90.7%で、7.3ポイントの差がありました。利用定員と在籍が収支にどう効くかは保育所の収支の見方で説明しています。


3. 園が整えること

① ここdeサーチの情報

子ども・子育て支援法第58条により、施設は教育・保育の情報と経営情報を都道府県知事に報告し、知事が公表します。報告と公表の基盤が WAM の「ここdeサーチ」です。

公表される主な項目内容
基本情報住所、教育・保育の内容、利用定員、実費徴収額など
経営情報(令和7年4月から)収益に対する人件費の割合、職種別の人員数、標準的な給与体系(モデル給与)

経営情報の報告は、事業年度の終了後5か月以内です(第58条第2項)。報告しない場合は、令和8年7月から基本分単価の5%の減算の対象になります。また、令和8年度に新設された保育 ICT 推進加算は、ここdeサーチの情報を9月末までに最新にすることを要件のひとつにしています(加算の全体は保育の ICT 化で扱っています)。保護者が比べる情報でもあるため、年に一度は内容を見直します。

② 保活ワンポータルの見学予約と空き枠

こども家庭庁が整備する保活情報連携基盤は、保活の情報収集、見学予約、就労証明書の発行などをオンラインで一か所で行えるようにする基盤です。令和8年度の自治体向け説明会資料(令和8年6月30日)では、保護者向けサイト「保活ワンポータル」を7月27日に開設する予定と示されていました。

保育施設向けの資料(令和8年7月)が挙げる、施設が行うことは次のとおりです。

  1. 管理者アカウントでログインする
  2. 見学予約枠を設定する
  3. ここdeサーチに無い情報を登録する
  4. 入所定員の空き枠情報を登録する

利用できる時期は、自治体の利用申請の時期によって違います。資料では、6月末までに申請された施設は保護者サイトの公開時から見学予約を使え、7月以降に申請された施設は申請の翌々月1日から使えるとされています。自分の市町村が利用を申請しているかを、まず市町村に確かめてください。空き枠は、資料の時点では数値だけの表示です。

③ 見学の受け方

見学は、保護者が希望先の順位を決める場です。国の制度で決まっている事項ではありませんが、次のように段取りを決めておくと、担当が変わっても同じ説明ができます。

段取り決めておくこと
受付受け付ける曜日と時間帯、1回の人数、予約の方法(オンライン・電話)
案内の順路保育室、午睡の場所、園庭、給食・調理の様子など、子どもの活動の妨げにならない順路
説明する内容保育の方針、1日の流れ、給食とアレルギーへの対応、安全の取組、保護者の負担(持ち物・実費徴収)
答え方を決めておく質問入園の決まり方(市町村の利用調整)、空きの状況、慣らし保育、病気のときの対応
記録見学者の数と、よく聞かれた質問

安全の取組は、保育所が保護者に周知しなければならない事項でもあります(児童福祉施設の設備及び運営に関する基準第6条の3第3項)。見学で安全計画の考え方を説明できるようにしておくと、周知の機会にもなります。安全計画の中身は保育所の安全計画で扱っています。

④ 市町村の利用調整のルールを知る

利用調整の点数や優先の基準は市町村が定めます。見学で「入れますか」と聞かれたときに正しく答えられるよう、市町村の案内(申込みの時期、選考の基準、きょうだいの扱い)を確かめておきます。

こども家庭庁の事務連絡(令和7年9月12日)は、きょうだいが同じ園を希望する場合を優先していない自治体に、見直しを検討するよう求めています。自分の市町村の扱いが変わっていないか、毎年の案内で確かめます。


4. 定員が埋まらないとき

定員充足率が下がっている地域では、募集の工夫だけでは埋まらないこともあります。WAM のリサーチレポートでは、定員を減らした保育所426施設で、利用率が85.6%から93.9%に上がり、赤字施設の割合は40.4%から27.2%に下がりました。レポートは、利用率が平均を下回る状況が続く場合には、早めに行政と協議することを勧めています。

利用定員の見直しの手続きは次のとおりです。

手続き根拠
利用定員を増やす確認の変更を申請する(子ども・子育て支援法第32条第1項)
利用定員を減らす減少の日の3か月前までに市町村長に届け出る(同第35条第2項)

公定価格は利用定員の区分で単価が決まるため、定員を減らすと単価が上がる区分もあります。区分の考え方は公定価格の仕組みで説明しています。

小規模保育事業の場合は、3歳以降の行き先(連携施設や利用調整での扱い)を説明できるかどうかが、保護者の判断に影響します。詳しくは小規模保育事業の始め方をご覧ください。


5. チェックリスト

  • ここdeサーチの基本情報(定員、保育の内容、実費徴収額)が最新になっている
  • 経営情報を事業年度の終了後5か月以内に報告した
  • 市町村が保活情報連携基盤の利用を申請しているか確かめた
  • 見学予約枠と入所の空き枠を登録する担当を決めた
  • 見学の受付の時間帯・人数・順路・説明内容を決めた
  • 入園の決まり方(市町村の利用調整)を、見学で正しく説明できる
  • 市町村の申込みの時期と選考の基準を、今年度の案内で確かめた
  • 利用率が下がっている場合に、市町村と定員について協議する時期を決めた

6. 落とし穴

  • 見学で入園を約束する:2号・3号の入園は市町村の利用調整で決まります。園が約束できることではありません。
  • 申込みを理由なく断る:子ども・子育て支援法第33条で、正当な理由のない拒否は禁じられています。
  • 公開情報を古いままにする:ここdeサーチや保活ワンポータルの情報は、保護者が最初に見るものです。定員や実費徴収額の変更を反映します。
  • 空き枠の登録を忘れる:空きがあっても、登録がなければ保護者には見えません。
  • 定員の見直しを先送りにする:定員を減らす届出は3か月前までです。年度の切り替えに間に合うよう、早めに市町村と協議します。

7. まとめ

  • 2号・3号の入園は市町村の利用調整で決まり、園は調整に協力する立場にある。1号は施設への直接申込み
  • 定員充足率は令和8年4月に全国で87.7%、申込者数は令和2年をピークに減っている
  • 園が整えるのは、ここdeサーチの情報、保活ワンポータルの見学予約と空き枠、見学での説明
  • 利用率の低い状態が続くなら、早めに市町村と定員を協議する。減らす届出は3か月前まで

参考資料