保育士等キャリアアップ研修は、専門分野別研修6分野・マネジメント研修・保育実践研修からなる、1分野15時間以上の研修です。国の通知「保育士等キャリアアップ研修の実施について」(平成29年4月1日 雇児保発0401第1号。直近の改正は令和8年3月6日 こ成基第32号)と、その別紙の「保育士等キャリアアップ研修ガイドライン」で内容が定められ、都道府県または都道府県知事が指定した研修実施機関が実施します。

園の経営にとって重要なのは、この研修の修了が処遇改善等加算(区分3)の要件になっていることです。副主任保育士は3分野以上とマネジメント研修、専門リーダーは4分野以上、職務分野別リーダーは担当分野を含む1分野以上の修了が必要で、この要件は令和8年度から本来の形で適用されています。加算を取れるかどうかは各年度の4月1日時点の修了者数で決まるため、受講の計画は前年度のうちに立てておく必要があります。

この記事では、通知・ガイドライン・処遇改善等加算の通知とFAQにもとづいて、研修の中身と受講計画の立て方を整理します。処遇改善等加算の区分と申請の流れは保育の処遇改善等加算で詳しく扱っています。


1. 研修の種類と対象者

研修分野・内容対象として想定される人
専門分野別研修①乳児保育 ②幼児教育 ③障害児保育 ④食育・アレルギー対応 ⑤保健衛生・安全対策 ⑥保護者支援・子育て支援各分野でリーダー的な役割を担う人(見込みの人を含む)
マネジメント研修組織のマネジメント専門分野でリーダーを経験し、主任保育士の下でミドルリーダーを担う人
保育実践研修保育の実践保育現場での実習経験が少ない人(保育士試験合格者など)や潜在保育士など

研修時間は、1分野15時間以上です。都道府県が確認した園内研修を受けた場合は、1分野あたり最大4時間を短縮できます。

食育・アレルギー対応の分野では、参照する国の資料が「児童福祉施設等における食事の提供ガイド」に改められています。研修の教材が古い資料を前提にしていないか、受講先の案内で確かめておくとよいでしょう。


2. 実施主体と修了の扱い

誰が研修を行うか

研修の実施主体は、都道府県か、都道府県知事が指定した研修実施機関です。指定を受けられるのは、市町村(特別区を含む)、指定保育士養成施設、就学前の子どもの保育に関する研修実績がある非営利団体に限られます。指定の効力はその年度だけで、翌年度も続けるには更新の届出が必要です。

処遇改善等加算FAQ第7版では、研修実施機関の「指定」は指定した都道府県の中でしか効力がないとしています。研修を行う側は、研修を行う場所ごとにその都道府県の指定を受ける必要があります。受講する側は、受けようとしている研修が、都道府県の実施または指定を受けたものかを申込みの前に確かめてください。

修了の確認と修了証

  • 修了は、15時間以上をすべて受けたことの確認と、受講後のレポートで判断します
  • 修了すると、都道府県または研修実施機関から様式第1号の修了証が交付されます
  • 修了証番号は12桁で、「都道府県番号2桁-発行年2桁-研修指定番号3桁-番号5桁」の並びです
  • 研修種別の番号は、1 乳児保育、2 幼児教育、3 障害児保育、4 食育・アレルギー対応、5 保健衛生・安全対策、6 保護者支援・子育て支援、7 マネジメント、8 保育実践です

他の都道府県で受けた研修

ガイドラインでは、研修の修了は会場の所在地の都道府県以外の都道府県でも効力を有するとされています。申込みの際に本人の同意を得て、都道府県の間で修了者の情報を共有する仕組みもあります。転職してきた職員が前の勤務地で修了した研修も、修了証で確かめれば数えることができます。

e ラーニング

ガイドラインでは、講義に演習やグループ討議を組み合わせる工夫が望ましいとしたうえで、e ラーニングで行う場合は「保育士等キャリアアップ研修をeラーニングで実施する方法等に関する調査研究(平成30年度厚生労働省委託事業)」を参考にすることとしています。オンラインで受講できるかどうかは研修実施機関によって異なるため、受講先ごとに確かめてください。


3. 処遇改善等加算(区分3)の研修修了要件

研修修了要件は、「施設型給付費等に係る処遇改善等加算(区分3)に係る研修修了要件について」(令和7年9月16日、こ成基202・7初幼教第4号)で定められています。

役職経験の目安修了すべき研修(保育所)改善額(月額)
副主任保育士おおむね7年以上専門分野別研修3分野以上+マネジメント研修4万円以内(区分3-①)
専門リーダーおおむね7年以上専門分野別研修4分野以上4万円以内(区分3-①)
職務分野別リーダーおおむね3年以上担当する分野を含む1分野以上原則5千円(区分3-②)

加算の人数は、人数A(基礎職員数×1/3)と人数B(基礎職員数×1/5)を上限に、4月1日時点の研修修了者数と比べて少ない方をとります。この人数には修了見込みの職員を含めません。

令和7年度に限っては、令和6年度に旧加算Ⅱを算定していた施設で、令和7年4月時点で在籍していた職員は修了見込みでも人数Aに数えてよいとする経過措置がありました(処遇改善等加算FAQ第7版)。令和8年4月1日時点で修了していない職員は、令和8年度の人数Aに含められません。

キャリアパス要件との関係

処遇改善等加算の区分1(基礎分)にはキャリアパス要件があり、その中に「資質向上の計画をつくって研修を行い、資格の取得を支援すること」が含まれます。保育所保育指針(平成29年厚生労働省告示第117号)も第5章で、初任者から管理職員までを見据えた体系的な研修計画を作成しなければならないとしています。キャリアアップ研修の受講計画は、この研修計画の中に位置づけると整理しやすくなります。


4. 受講計画の立て方

手順

  1. 役職と人数の枠を決める:基礎職員数から人数A・人数Bの上限を計算し、副主任保育士・専門リーダー・職務分野別リーダーを何人置くかを決めます。
  2. 職員ごとの修了状況を一覧にする:修了証で、職員ごとに修了した分野と修了年を確かめます。修了見込みの職員とは列を分けます。
  3. 不足している分野を洗い出す:副主任保育士の候補がマネジメント研修を受けていない、専門リーダーの候補が4分野に届いていない、といった不足を一覧にします。
  4. 受講の時期を決める:都道府県や研修実施機関の開催日程を確かめ、翌年度の4月1日までに修了するように割り振ります。
  5. 勤務の調整を組む:受講日のシフトを先に確保します。基本分単価には研修代替として年3日分の職員の費用が含まれています(留意事項通知 別紙2)が、15時間以上の研修を複数の職員が受ける場合はそれだけで足りないことがあるため、年間の勤務計画に組み込みます。
  6. 修了証を保管する:修了証の写しを職員ごとに保管し、加算の申請で求められたときにすぐ出せるようにします。

受講計画表の項目

項目記入すること
職員名・職位現在の職位と、任命する予定の職位
経験年数4月1日時点の経験年数
修了済みの分野分野名・修了年・修了証番号
受講予定の分野分野名・研修実施機関・日程
修了予定日翌年度の4月1日に間に合うか
勤務調整受講日の代替職員

5. チェックリスト

  • 受講する研修が、都道府県の実施または指定を受けた研修であることを確かめた
  • 副主任保育士の候補が、マネジメント研修を含めて修了しているか、年度内に修了できる日程になっている
  • 専門リーダーの候補が、4分野以上の修了に届く日程になっている
  • 職務分野別リーダーが、担当する分野の研修を修了している
  • 4月1日時点の修了者数で人数A・人数Bを計算した
  • 修了証の写しを職員ごとに保管している
  • 研修計画を、保育所保育指針第5章の体系的な研修計画として文書にしている

6. 落とし穴

  • 指定を受けていない研修を受ける:研修実施機関の指定は都道府県ごとです。名称が似ていても、キャリアアップ研修として扱われない研修があります。
  • 修了が4月1日に間に合わない:年度末に受講が集中すると、定員に入れず修了が翌年度になることがあります。前年度の早い時期から計画します。
  • マネジメント研修を後回しにする:副主任保育士には専門分野3分野以上に加えてマネジメント研修が必要です。
  • 修了証を本人任せにする:退職や異動のときに修了の記録が園に残っていないと、加算の申請で確かめられなくなります。
  • 研修の受講を配分の約束だけで終わらせる:修了見込みで賃金を改善した職員が合理的な理由なく修了しないまま配分を続けると、返還措置に当たりうるとFAQは説明しています。

7. まとめ

  • キャリアアップ研修は、専門分野別6分野・マネジメント・保育実践の研修で、1分野15時間以上
  • 実施主体は都道府県か都道府県知事が指定した研修実施機関。修了は他の都道府県でも効力を持つ
  • 処遇改善等加算(区分3)では、副主任保育士に3分野以上+マネジメント、専門リーダーに4分野以上、職務分野別リーダーに担当分野を含む1分野以上の修了が必要
  • 加算の人数は4月1日時点の修了者数で決まるため、前年度のうちに受講計画を立てて修了させる

参考資料