認可保育所を開くには、児童福祉法にもとづく「認可」と、子ども・子育て支援法にもとづく「確認」の2つの手続きが必要です。認可は都道府県知事(指定都市・中核市の区域では市長)が行い、確認は市町村長が利用定員を定めて行います。

実際の流れは、市町村への事前相談と公募への応募から始まり、事前協議、整備補助の交付決定、着工、認可申請、完成前検査、認可、開所と進みます。自治体の公募の例を見ると、開園の前年度の秋から冬に事業者を選び、4月1日に開園する形が多く、開園したい年度の2年前には市町村への相談を始めるのが現実的です。

一方で、全国の保育所等の申込者数は令和2年をピークに減り続け、定員充足率も下がっています。待機児童のいない地域では、需給を理由に認可されないこともあります。この記事では、法令・国の通知・自治体の公表資料にもとづいて、開園までの順番と、それぞれの段階で確かめることを整理します。


1. 認可と確認:2つの手続きの関係

手続き根拠行う者判断すること
認可児童福祉法第35条第4項都道府県知事(指定都市・中核市は市長)保育所として設置してよいか
確認子ども・子育て支援法第31条市町村長施設型給付(私立保育所は委託費)の対象とするか。2号・3号の区分ごとに利用定員を定める

札幌市は、保育所を設置するには「児童福祉法の規定に基づき、その設置について市長の認可を受け、また、子ども・子育て支援法に基づき、施設型給付費を受ける施設として市長の確認を受ける必要があります」と説明しています。確認の申請ができるのは、国と公立大学法人を除き、法人に限られます(子ども・子育て支援法第31条第1項)。

認可の審査で見られること(児童福祉法第35条第5項)

知事は、都道府県の条例で定める設備・運営の基準に合っているかに加えて、社会福祉法人・学校法人以外の者については次の点を審査します。

  1. 保育所を経営するために必要な経済的基礎があること
  2. 経営者(法人の場合は経営担当役員)が社会的信望を有すること
  3. 実務を担当する幹部職員が社会福祉事業に関する知識または経験を有すること
  4. 欠格事由に当たらないこと(認可を取り消されて5年を経過しない者など)

国の通知「保育所の設置認可等について」(平成12年3月30日 児発第295号)は、この審査の目安として次の内容を示しています。

項目通知の内容
物件原則として、経営に直接必要なすべての物件について所有権を有しているか、国・地方公共団体から貸与・使用許可を受けていること(不動産の貸与を受けて設置する場合は、要件緩和の通知に従う)
資金保育所の年間事業費の12分の1以上に相当する資金を、普通預金・当座預金などで有していること
幹部職員保育所等で2年以上勤務した経験を有する者か、同等以上の能力を有すると認められる者(代わりに、社会福祉事業の知識経験者などで構成する運営委員会を設ける方法もある)

都道府県は、これをもとに独自の運用を定めています。たとえば神奈川県の「保育所認可等の手引き~新設編~」(令和6年10月)の記載例では、不動産の貸与を受ける場合の資金を「年間賃借料+1,000万円」などとしています。所在地の都道府県の手引きを必ず確かめてください。

需給による不認可(児童福祉法第35条第8項)

基準に合えば「認可をするものとする」とされていますが、区域内の保育所などの利用定員の総数が、都道府県の子ども・子育て支援事業支援計画で定める必要利用定員総数に既に達しているときなどは、認可をしないことができるとされています。認可の前には、都道府県児童福祉審議会の意見を聴き(第6項)、所在地の市町村長に協議します(第7項)。


2. 開園までの順番

神奈川県の手引きが示す流れは次のとおりです。

  1. 市町村(保育の実施主体)への事前相談
  2. 県(認可権者)への事前協議(児童福祉審議会に意見を聴く)
  3. 補助金の交付申請 → 交付決定
  4. 施設整備の入札・契約・着工
  5. 県への設置認可申請(市町村を経由し、市町村の意見書が付く)
  6. 完成前検査
  7. 設置認可(認可指令書の交付)
  8. 開所

手引きでは、事前協議が受理されるまでは原則として施設整備の入札・契約・工事に着手できないこと、補助金の交付決定を受ける前に入札などに着手すると補助金を受けられなくなることが注意書きされています。市町村が公募する場合は、市町村が先に県と事前協議を行います。

自治体の公募の実例

自治体内容(公表ページの記述)
船橋市令和9年4月1日までに開設する民間認可保育所の募集。事前相談(必須)は令和7年11月14日まで、書類提出は11月17日〜28日、事業者内定は令和8年1月中旬〜2月中旬。認可保育所などを2年以上運営していること、定員は原則60人以上、開園時間は7時〜19時を含む12時間以上(月〜土)などが条件(募集は終了)
大阪市令和8年度の保育施設等設置・運営事業者募集。応募期間は年5回。開設は原則翌年4月(令和9年4月)、工期の関係で最大で令和10年4月まで延ばせる
世田谷区提案型の募集。第2期の応募書類は令和8年11月9日まで、事業者の決定は令和9年2月下旬以降、原則として令和10年4月1日までに開園
川崎市民間事業者活用型保育所。募集は令和8年2月20日〜3月24日、運営開始は令和9年4月1日(厳守)。賃貸物件を改修して定員60人以上の認可保育所を運営する法人

どの例も、公募の時期・応募資格・定員・開所時間の条件が自治体ごとに違います。開園を考える地域が決まったら、その市町村の公募の情報と、都道府県の認可の手引きを最初に集めてください。


3. 設備と職員の最低基準

認可の審査で使われるのは、都道府県(指定都市・中核市)の条例です。条例は、児童福祉施設の設備及び運営に関する基準(昭和23年厚生省令第63号)にもとづいて定められ、職員の員数や居室の床面積などは国の基準に「従う」ものとされています(児童福祉法第45条第2項)。

設備(第32条)

設備基準(1人あたり)
乳児室1.65㎡以上
ほふく室3.3㎡以上
保育室または遊戯室(満2歳以上)1.98㎡以上
屋外遊戯場(満2歳以上)3.3㎡以上(付近にある代わりの場所を含む)

満2歳未満の子どもを受け入れる場合は、乳児室またはほふく室、医務室、調理室、便所を設けます。保育室などを2階以上に設ける場合は、耐火・避難の要件があります。満3歳以上の子どもの食事は、一定の要件を満たせば外部で調理して搬入できます(第32条の2)。

大阪市は、待機児童の多い大都市部の一部に認められた居室面積の特例を活用しており、同市の公表ページでは、令和5年12月22日の閣議決定で令和11年3月31日まで延長されたとしています。

職員(第33条)

保育士、嘱託医、調理員を置きます(調理業務を全部委託する場合は調理員を置かないことができる)。保育士の数は次のとおりで、1施設につき2人を下ることはできません。

年齢保育士1人あたり
乳児おおむね3人
満1歳以上満3歳未満おおむね6人
満3歳以上満4歳未満おおむね15人
満4歳以上おおむね25人

保育時間は1日8時間を原則とし、保育所の長が定めます(第34条)。保育の内容は、保育所保育指針に従います(第35条)。


4. 施設整備の補助

こども家庭庁「令和8年度 保育関係予算の概要」では、施設整備の補助は「就学前教育・保育施設整備交付金」として示されています。

項目内容
予算令和8年度予算229億円+令和7年度補正予算306億円
設置主体(私立保育所)社会福祉法人、日本赤十字社、公益社団法人・公益財団法人、学校法人。市町村が「実施計画」の採択を受けている場合は、市町村が認めた者も設置主体にできる
補助割合原則 国1/2・市区町村1/4・設置主体1/4
嵩上げ待機児童対策・人口減少対策などに当たる場合は 国2/3・市区町村1/12・設置主体1/4

賃貸物件を改修して開く場合は、「保育所等改修費等支援事業」(保育対策総合支援事業費補助金)があり、新設・定員拡大の補助基準額は定員60名以上で73,216千円などとされています。令和8年度の見直しで、定期借家契約の賃貸物件は補助の対象外になりました。物件の契約形態は、公募に応募する前に確かめてください。

補助は市区町村が負担する仕組みです。市区町村が補助の事業を実施していない、または公募の条件で対象を限っている場合は使えないため、事前相談の段階で確かめます。


5. 開園後の運営を見据えて確かめること

認可と確認を受けたあとは、公定価格(私立保育所は委託費)で運営します。単価は利用定員の区分で決まり、定員が大きいほど子ども1人あたりの単価は低くなります。単価の仕組みは公定価格の仕組み、在籍と収支の関係は保育所の収支の見方で扱っています。

こども家庭庁「保育所等関連状況取りまとめ(令和8年4月1日)」では、全国の定員充足率は87.7%、申込者数は令和2年をピークに減っており、市区町村の計画の集計では2025年から2029年の5年間で申込者数は約9.5万人減る見込みです。開園する地域の年齢別の申込みの見込みを、市町村の子ども・子育て支援事業計画で確かめておくことが、開園後の利用率を左右します。

開園準備のチェックリスト

  • 所在地の市町村の公募の有無、時期、応募資格を確かめた
  • 都道府県(指定都市・中核市)の認可の手引きと条例を入手した
  • 事前協議の前に、入札・契約・着工をしない計画にしている
  • 補助金の交付決定の前に入札などに着手しない日程を組んだ
  • 物件の契約形態が補助の対象になるか(定期借家でないか)を確かめた
  • 年間事業費の12分の1以上に相当する資金など、経済的基礎の要件を満たせる
  • 実務を担当する幹部職員の経験の要件を満たす人がいる
  • 保育士の採用計画を、年齢別の配置基準と開園時の定員から立てた
  • 市町村の子ども・子育て支援事業計画で、地域の保育の需要の見込みを確かめた

6. 落とし穴

  • 認可だけで給付が受けられると思う:確認を受けて利用定員が定まらないと、施設型給付(委託費)の対象になりません。
  • 交付決定の前に工事を始める:補助金を受けられなくなります。
  • 定期借家の物件で計画する:令和8年度から、改修費等支援事業の対象外です。
  • 需要の見込みを確かめない:必要利用定員総数に達している地域では、認可されないことがあります。認可された後も、定員充足率が低いと収支が苦しくなります。
  • 職員の採用が開園に間に合わない:配置基準を満たす保育士がそろわないと開園できません。完成前検査の時期から逆算して採用を進めます。

7. まとめ

  • 認可保育所には、児童福祉法の「認可」と子ども・子育て支援法の「確認」の両方が必要
  • 流れは、事前相談 → 事前協議 → 補助の交付決定 → 着工 → 認可申請 → 完成前検査 → 認可 → 開所
  • 自治体の公募は、開園の前年度の秋から冬に選定する例が多く、2年前には市町村に相談を始める
  • 需給によって認可されないことがあり、施設整備の補助の設置主体や物件の条件にも制約がある

参考資料