保育所の利用定員を減らすときは、減少の日の3か月前までに市町村長に届け出ます(子ども・子育て支援法第35条第2項)。 増やすときは、市町村長に確認の変更を申請します(同法第32条)。どちらも、市町村の子ども・子育て支援事業計画や、保育の需要の見通しとあわせて調整されるため、実際には3か月よりずっと前から相談を始めるのが一般的です。
利用定員は、公定価格の定員区分を決める数字でもあります。在籍が定員を大きく下回ると、子ども1人あたりの単価が低い区分のまま収入が落ち込みます。この記事では、子ども・子育て支援法と、こども家庭庁の公定価格の留意事項通知にもとづいて、利用定員の変更の手続きと、公定価格への影響を整理します。
1. 利用定員と認可定員
保育所には、2つの「定員」があります。
| 定員 | 根拠 | 決める人 | 意味 |
|---|---|---|---|
| 認可定員 | 児童福祉法 | 都道府県(指定都市・中核市はその市) | 設備と職員の基準で認可された受け入れの上限 |
| 利用定員 | 子ども・子育て支援法第31条 | 市町村長 | 施設型給付(委託費)の対象として確認された定員。2号・3号の区分ごとに定める |
利用定員は、市町村長が確認のときに定めるもので、原則として認可定員の範囲内で設定します。市町村長は利用定員を定めるとき、子ども・子育て会議などの合議制の機関の意見を聴くこととされています(同法第31条第2項)。
公定価格の定員区分は、認可定員ではなく利用定員で決まります。 利用定員を下げても認可定員はそのまま、という形もありえますが、自治体の運用によって扱いが違うので、両方の担当に確かめます。
2. 変更の手続き
| 変更 | 根拠 | 手続き | 期限 |
|---|---|---|---|
| 利用定員を増やす | 子ども・子育て支援法第32条 | 市町村長に確認の変更を申請する | 法律上の期限はない(市町村の計画・審議の日程による) |
| 利用定員を減らす | 同法第35条第2項 | 市町村長に届け出る | 減少の日の3か月前まで |
| 確認を辞退する(給付の対象から外れる) | 同法第36条 | 予告期間を設けて辞退する | 3か月以上の予告期間 |
減らすときの便宜の提供
利用定員の減少を届け出たときは、届出の日の前1か月以内に保育を受けていた子どもで、減少の日以後も保育を希望する人に対し、他の施設との連絡調整などの便宜を提供しなければなりません(同法第34条第5項)。在籍児を定員の減少で退園させることがないよう、在籍の見通しが減少後の定員に収まる時期を選ぶのが基本です。
実際の段取り
- 市町村の担当課に相談する:地域の保育の需要、事業計画での位置づけ、変更できる時期(多くは4月1日)を確かめます。
- 年齢ごとの定員の配分を決める:2号・3号、年齢ごとの受け入れ枠を決め直します。
- 認可定員の変更の要否を確かめる:都道府県などの手続きが要る場合は、その様式と期限も確かめます。
- 届出・申請を出す:減少は3か月前までに届け出ます。自治体の締切はこれより早いことがあります。
- 保護者への説明:入園の募集の枠が変わることを、募集の案内に反映します。
3. 公定価格への影響
定員区分と単価
こども家庭庁の「特定教育・保育等に要する費用の額の算定に関する基準等の実施上の留意事項について」(最終改正 令和8年4月8日)の別紙2(保育所)では、定員区分は「利用する施設の利用定員の総和に応じた区分」を適用するとしています。
| 定員区分 | 区分の刻み |
|---|---|
| 20人 | 1区分 |
| 21〜60人 | 5人刻み |
| 61〜170人 | 10人刻み |
| 171人以上 | 1区分 |
定員が小さいほど子ども1人あたりの単価は高くなります。定員の小さい区分は令和7年度に細かくされました。
利用定員90人で在籍70人の園を例にすると、90人の区分の単価で70人分の委託費を受け取ることになります。利用定員を70人台に下げれば1人あたりの単価は上がりますが、受け入れの上限も下がります。どちらが有利かは、市町村の単価表で両方の区分を計算して比べます。
定員の大きさで変わる職員と加算
定員によって、公定価格に含まれる職員や加算の扱いも変わります。
| 項目 | 定員による違い |
|---|---|
| 保育士の+1人 | 利用定員90人以下の施設は、年齢別配置基準に加えて保育士1人分が基本分単価に含まれる |
| 調理員等 | 定員20人は1人、21〜40人は2人(うち1人は非常勤)、41〜150人は2人、151人以上は3人(うち1人は非常勤) |
| チーム保育推進加算 | 加配人数の上限が、定員120人以下で1人、121人以上で2人 |
利用定員を90人を超える区分から90人以下へ下げると、基本分単価に保育士1人分が含まれるようになります。職員配置と単価の両方で計算し直します。
定員を恒常的に超える場合の調整
反対に、利用定員を超えて子どもを受け入れ続けると、次の条件で単価が調整されます(留意事項通知 別紙2 Ⅴの1)。
- 直前の連続する2年度間、常に利用定員を超えている
- かつ、各年度の年間平均在所率(各月初日の利用子ども数の総和÷各月初日の利用定員の総和)が120%以上
この状態の施設は、利用定員の見直しに向けた指導の対象にもなります。定員を超えて受け入れる場合でも、設備と職員は受け入れる子どもの数で基準を満たしている必要があります。
4. 減員を検討する順番
- 在籍の見通しを3年分作る:年齢ごとの在籍と、地域の出生数・転入の動き、近隣の新設園の計画から見込みます。
- 定員区分ごとの収入を比べる:今の利用定員と、下げた場合の利用定員で、公定価格の収入を計算します。
- 職員配置と人件費を比べる:定員90人以下の+1人、調理員の数など、定員で変わる職員を確かめます。
- 募集の手を先に打つ:定員を下げる前に、見学対応や情報の出し方で在籍を増やせないかを確かめます。
- 市町村に相談する:地域の需要と事業計画を踏まえ、変更の時期を決めます。
収支の読み方は「保育所の収支の見方」、募集の工夫は「園児募集の方法」を参照してください。
チェックリスト
- 認可定員と利用定員の両方を、2号・3号・年齢ごとに把握している
- 下げた場合の定員区分の単価を、市町村の単価表で計算した
- 定員90人を境に変わる職員の扱いを確かめた
- 在籍児が減少後の定員に収まる時期を選んだ
- 減少の日の3か月前(自治体の締切)までに届け出る予定を立てた
5. まとめ
- 利用定員を減らすときは減少の日の3か月前までに市町村長へ届け出る。増やすときは確認の変更の申請
- 公定価格の定員区分は利用定員で決まる。定員が小さいほど1人あたりの単価は高い
- 2年度連続で定員を超え、年間平均在所率が120%以上なら調整が掛かる
- 減員は、在籍の見通し・収入・職員配置を比べてから、市町村と時期を決める
手続きの様式と締切は自治体によって違います。早い段階で市町村と都道府県の担当に相談してください。
参考資料
- 子ども・子育て支援法(平成24年法律第65号)(e-Gov 法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/424AC0000000065
- こども家庭庁「特定教育・保育等に要する費用の額の算定に関する基準等の実施上の留意事項について」(改正後全文): https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/3a1576c7-071d-4325-8be8-edced6d12ee1/29277d03/20260727_policies_kokoseido_202.pdf
- こども家庭庁「子ども・子育て支援制度」: https://www.cfa.go.jp/policies/kokoseido