保育士宿舎借り上げ支援事業は、保育士の就業継続を支援するため、宿舎の借り上げ費用の一部を補助する仕組みです。対象となる保育士の要件や補助額、負担割合は自治体ごとに異なる部分があるため、申請前に自治体の案内で確認することが欠かせません。

この記事では、対象となる保育士の要件、補助の考え方、申請の流れを整理します。


事業の目的

この事業は、保育士の就業継続を支援するため、保育士が居住する宿舎を借り上げる費用の全部または一部を補助することを目的としています。保育士の確保・定着が課題になっている地域で、住居費の負担を軽減し、就業を続けやすくする狙いがあります。都市部など住居費が高い地域では、この支援の有無が採用の場面で比較検討の材料になることもあります。

対象となる保育士の要件

対象となるのは、次の条件を満たす保育士です。

  • 保育所等に常勤で勤務している
  • 月120時間以上、保育に従事している
  • 採用から10年目の会計年度末までの人(対象となる採用年度の基準は実施年度ごとに更新されるため、自治体の最新の案内で確認してください)

また、1人1回限りの利用という制限があります。過去にこの事業(またはこれに相当する事業)を利用した保育士は、原則として再度利用できません。1つの保育所で複数の保育士が対象になる場合、それぞれの保育士について、過去の利用歴を確認しておく必要があります。

転職してきた保育士がこの制度を目的の一つとして応募してくることもあるため、採用面接の段階で、以前の勤務先でこの事業を利用したことがあるかを確認しておくと、入職後に「対象外だった」という行き違いを防げます。

補助額と負担割合

補助額の上限は月額で示され、経過措置の対象となる場合は上限額が下がる仕組みになっています。具体的な上限額は、実施年度や自治体によって見直されることがあるため、申請時点の最新の案内で確認してください。

費用の負担は、国が一部を補助し、残りを都道府県・市区町村・事業者などで分担する仕組みです。ただし、実施主体(都道府県か市区町村か)や、市区町村・事業者の負担割合は、自治体ごとに異なります。自治体によっては、事業者にも一定の負担を求めている場合があるため、負担割合を自治体の要綱で確認してください。

補助の対象となる費用も、家賃そのものに限られるか、共益費や敷金・礼金の一部も含まれるかなど、自治体によって範囲が異なります。契約前に対象費用の範囲を確認しておくと、想定外の自己負担が発生することを防げます。

申請の流れ

  1. 保育所等が所在する自治体が、この事業を実施しているかを確認する(実施していない自治体もあります。近隣の自治体でも実施状況が異なることがあります)
  2. 対象となる保育士の条件(勤務時間、採用からの年数、過去の利用歴)を確認する
  3. 自治体の申請窓口で、様式・必要書類・受付期間を確認する
  4. 申請書類を提出し、審査を経て補助金の交付決定を受ける
  5. 決定後、宿舎の借り上げにかかった費用について、定められた方法で補助を受ける

申請の受付期間は月単位で締切が設定されていることが多く、締切を過ぎると次の受付期間まで申請できない場合があります。新しく保育士を採用する際は、採用のタイミングに合わせて早めに自治体へ確認してください。

申請に必要な書類には、賃貸借契約書の写し、家賃の支払いを確認できる書類、対象となる保育士の勤務条件を確認できる書類(雇用契約書など)が求められることが多くあります。自治体ごとに必要書類が異なるため、事前に一覧で確認し、契約前に準備しておくと、申請の遅れを防げます。

実行時につまずきやすいところ

対象となる保育士の要件を、他の自治体の案内で確認してしまう。 対象年数や勤務時間の要件は共通する部分が多いものの、実施の有無や細かい要件は自治体ごとに異なります。自分の保育所が所在する自治体の案内を確認してください。

過去の利用歴を確認せずに申請する。 1人1回限りの利用という制限があるため、転職してきた保育士が以前の勤務先で利用済みの場合、再度の利用はできません。採用時に確認しておくと、申請時のトラブルを避けられます。

申請の締切を把握していない。 受付期間が月単位で決まっている自治体では、締切を過ぎると次の受付まで待つことになります。採用が決まったら早めに自治体へ確認してください。

まとめ

  • 保育士宿舎借り上げ支援事業は、常勤で月120時間以上勤務し、採用から10年目までの保育士が対象
  • 1人1回限りの利用という制限がある
  • 費用は国と自治体・事業者などで分担する仕組みだが、実施主体・負担割合・補助額の上限は自治体ごとに異なる
  • 申請の窓口・様式・受付期間は、保育所等が所在する自治体に確認する

求人票にこの支援制度の有無を明記できるかどうかも、応募の増減に関わります。自治体への確認が済んだら、求人票や採用ページに反映してください。保育士の採用そのものの進め方は「保育士の採用|求人票の書き方と応募を増やす順番」で解説しています。

参考資料