保育園の定員割れは、地域の子どもの減少と、自園の利用定員・年齢構成が地域の需要とずれていることが重なって起きます。前者は園の努力では変えられませんが、後者は見通しを立てれば、数年前から手を打てます。

国の方針も、人口減少を前提に切り替わっています。こども家庭庁「保育政策の新たな方向性」(令和6年12月20日)は、これからの保育政策の軸を、待機児童対策を中心とした「保育の量の拡大」から「地域のニーズに対応した質の高い保育の確保・充実」へ移すとしています。人口減少地域については、統廃合や規模の縮小、多機能化などの計画的な取組を国が支援する方向です。

この記事では、自園の在籍を3年先まで見通す手順と、見通しの期間ごとの打ち手を整理します。全国の定員充足率や収支への影響の数字は、保育所の収支の見方でまとめています。


1. 定員割れが起きる仕組み

地域の需要が減っている

全国の保育所等の定員充足率は下がり続けており、こども家庭庁の「保育所等関連状況取りまとめ(令和8年4月1日)」では87.7%でした。過疎地域では、令和3年4月から令和8年4月までの5年間で81.3%から72.7%へと大きく下がっています。保育の申込者数も令和2年をピークに減っています。

「保育政策の新たな方向性」の参考資料(令和8年3月版)は、受け皿の整備で待機児童が減る一方、過疎地域など待機児童が少ない地域では定員充足率が下がり、安定的な運営が難しくなる施設や、統廃合などが必要になる施設が出てくる可能性があると指摘しています。

園の側で起きている「ずれ」

同じ地域でも、定員割れの度合いは園ごとに違います。差が出るのは、次の3つのずれです。

ずれ起きること
利用定員と在籍のずれ公定価格の単価は利用定員の区分で決まるため、在籍が離れるほど想定より収入が少なくなる
年齢別の定員と需要のずれ0〜2歳の申込みが多い地域で3〜5歳の枠が空く、またはその逆が起きる
持ち上がりの構造0歳・1歳で入った子どもが持ち上がると、上の学年の新規の枠は小さくなる。低年齢で空きが出ると、数年かけて上の学年まで空きが残る

特に3つめは見落とされがちです。今年度の0歳・1歳の空きは、放っておくと数年後の2歳以上の空きになります。そのため、4月1日時点の在籍だけでなく、年齢別に数年先まで並べて見る必要があります。


2. 在籍の見通しを立てる

手順1:自園の年齢別の在籍を3年先まで並べる

まず、自園の数字だけで作れる見通しです。

  1. 今年度の年齢別・認定区分別の在籍を並べる
  2. 翌年度は、各年齢を1つずつ持ち上げ、5歳児は卒園として外す
  3. 年齢別の利用定員から持ち上がりを引いた数が、翌年度4月に新しく受け入れる必要がある人数になる
  4. 過去3年分の新規入所の実績(年齢別)と比べて、その人数が埋まりそうかを見る
  5. 同じ計算を3年先まで繰り返す

公定価格は各月初日の在籍で支払われるので、年度途中の入所・退所の傾向も、過去の実績から月別に見ておきます。

手順2:地域の子どもの数を調べる

次に、園の外の数字です。見る順番は次のとおりです。

資料分かること入手先
住民基本台帳の年齢別人口自園の周りに、いま何歳の子どもが何人いるか市区町村の統計のページ(町丁目別に公表している市区町村もある)
出生数1〜2年後に0歳・1歳の申込みをする世代の大きさ市区町村・都道府県の人口動態の統計
地域別将来推計人口5年ごとの0〜4歳人口の見通し国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口(令和5(2023)年推計)」。令和2年の国勢調査をもとに、令和32年までの市区町村別・5歳階級別の人口を公表
入所の申込み・空きの状況年齢別の申込みの多さと、空きの出方市区町村の保育の案内(年齢別の空き状況や申込状況を公表している市区町村が多い)

手順3:市町村の子ども・子育て支援事業計画と照らす

市町村は、5年を一期とする子ども・子育て支援事業計画を定めます(子ども・子育て支援法第61条第1項)。計画では、市町村が定める教育・保育提供区域ごとに、各年度の認定区分ごとの必要利用定員総数と、提供体制の確保の内容・実施時期を定めます(同条第2項)。

見るべきところは次の2つです。

  • 自園がある区域の「量の見込み」と「確保の内容」:区域全体で定員が余る見込みなのか、年齢によってはまだ足りないのか
  • 区域内で予定されている整備や定員の変更:新しい施設の開設や、ほかの園の定員の見直しの予定

この計画は、市町村が定員の見直しや施設整備の補助を判断するときの土台になります。自園の見通しが計画と大きく違うときは、早めに市町村の担当課に相談します。

診断のチェックリスト

  • 年齢別の在籍を、翌年度から3年先まで並べている
  • 翌年度4月に新しく受け入れる必要がある人数を、年齢別に出している
  • 周辺の0〜5歳人口と出生数の推移を、ここ5年分見ている
  • 市町村の子ども・子育て支援事業計画で、自園の区域の量の見込みを確かめている
  • 見学・問い合わせの件数を月別に記録し、前年と比べている
  • 利用定員を変えた場合の収入と職員配置を試算したことがある

3. 見通しの期間ごとの打ち手

1年以内:選ばれるための情報と、空き定員の活用

① 保護者が見る情報を整える

認可保育所の2号・3号の入園は市町村の利用調整で決まりますが、保護者が希望する園の順位は、園の情報と見学で決まります。ここdeサーチの情報、保活ワンポータルの見学予約枠と空き枠の登録、ホームページやGoogleマップの情報を最新にします。進め方は園児募集の方法と見学対応の進め方で扱っています。

② 空き定員で一時預かりや誰でも通園を受ける

定員に満たない分の枠を使う形の事業があります。こども誰でも通園制度(乳児等通園支援事業)は令和8年度から全国の市町村で給付として実施されており、保育所等の定員に満たない範囲で受け入れる「余裕活用型」があります。在籍していない子どもと家庭が園を知る機会にもなります。要件と準備はこども誰でも通園制度の受入れにまとめました。

③ 受け入れの幅を広げる

「保育政策の新たな方向性」は、障害児・医療的ケア児の受入体制の充実や、病児保育・延長保育・一時預かりの充実を掲げています。福祉医療機構(WAM)の2024年度の分析では、黒字施設は赤字施設より障害児保育加算や療育支援加算の算定率が高くなっていました。受け入れの体制と加算の要件を合わせて確かめます。

1〜3年:利用定員と年齢別の構成を見直す

① 利用定員を減らす

在籍が利用定員を下回り続ける見込みなら、利用定員の見直しを検討します。利用定員を減らすときは、減らす日の3か月前までに市町村長に届け出ます(子ども・子育て支援法第35条第2項)。定員を減らすと定員区分が変わり、子ども1人あたりの単価は上がります。令和7年度には、定員と実員の乖離を縮めるため、定員60人以下の区分が5人刻みに細かくなりました。

② 年齢別の定員の構成を変える

地域の申込みが0〜2歳に偏っているのか、3〜5歳に偏っているのかで、年齢別の定員の組み方を見直します。保育室の面積や職員配置の基準が年齢で違うので、設備と職員の両方で成り立つかを確かめ、認可の変更の手続きを所管の自治体に相談します。

3年以上先:運営の形を変える

① 認定こども園への移行

認定こども園になると、2号・3号に加えて、保護者が施設に直接申し込む1号の子どもを受け入れられます。移行の手続きと費用は自治体ごとに違うため、市町村の計画と合わせて検討します。

② 多機能化

「保育政策の新たな方向性」の参考資料(令和8年3月版)では、人口減少地域の保育機能を確保するため、市町村が中心となって地域の保育所等と連携し、多機能化や法人間の連携を進める方向が示されています。市町村が国に提出する実施計画が採択されると、過疎地域での多機能化や統廃合にかかる整備・改修費の国庫補助率が嵩上げされます(計画的に多機能化等に取り組む自治体数の目標は令和8年度に100自治体、令和7年度の実績は104自治体)。園が単独で決めるものではなく、市町村の計画に位置づけてもらうことが前提です。

③ 小規模・過疎地域向けの仕組み

令和8年4月からは、3〜5歳児だけを対象とする小規模保育事業が全国で実施できるようになりました。また令和8年度には、過疎地域など特別地域にある小規模な保育所などを対象に、特別地域保育体制確保対応加算が設けられています。自園が対象になるかを、単価表と市町村の案内で確かめます。

④ 法人間の連携・合併・事業譲渡

同じ方針は、必要な場合に地域で法人の合併や事業譲渡が円滑に進むようにすることも重要だとしています。こども家庭庁は令和8年3月31日付けの事務連絡で、合併・事業譲渡等に関するガイドラインを示しました。事業譲渡では、譲渡する法人と譲り受ける法人の法人格や事業の種類によって、認可や確認の手続きが変わります。検討を始める段階で、市町村と都道府県の担当課に相談します。


4. 実行時の落とし穴

利用定員を減らしたら、配置と加算の要件も変わる

定員区分が変わると単価は上がりますが、定員に応じた職員配置や、主任保育士専任加算などの要件も変わります。単価だけで判断せず、年間の収入と人件費を試算してから決めます。

減らしたあとに在籍が戻ったとき

利用定員を超える受け入れは可能ですが、直前の連続2年度に常に利用定員を超え、かつ年間平均在所率が120%以上になると、定員を恒常的に超過する場合の調整(減算)がかかります。減らす幅は、3年先の見通しの幅を見て決めます。

4月1日の数字だけで判断する

公定価格は各月初日の在籍で支払われます。4月に空いていても年度の途中で埋まる年齢もあれば、その逆もあります。月別・年齢別の実績で判断します。

市町村の計画と違う方向に投資する

施設整備の補助や定員の変更は、市町村の計画を土台に判断されます。区域の量の見込みと逆の方向に独自に整備を進めると、補助が受けられず、定員の見直しも認められにくくなります。

見学で入園を約束する

2号・3号の入園は市町村の利用調整で決まります。空きが多い時期でも「入れます」と言い切らず、利用調整の仕組みと空きの状況を正確に伝えます。


5. まとめ

  • 定員割れは、地域の子どもの減少と、自園の利用定員・年齢構成のずれが重なって起きる
  • 年齢別の在籍を3年先まで並べ、翌年度に新しく受け入れる必要がある人数を出す
  • 住民基本台帳・出生数・地域別将来推計人口と、市町村の子ども・子育て支援事業計画の量の見込みで、地域の需要を確かめる
  • 1年以内は情報と空き定員の活用、1〜3年は利用定員と年齢別構成の見直し(減らす日の3か月前までに届出)、3年以上先は移行・多機能化・法人間の連携を、市町村と相談しながら進める

参考資料