保育所児童保育要録(以下、要録)は、年長児の1年間の保育の過程と育ちをまとめて、就学先の小学校へ引き継ぐ資料です。保育所保育指針第2章4(2)ウが、就学に際して「子どもの育ちを支えるための資料が保育所から小学校へ送付されるようにすること」を求めており、その取扱いを厚生労働省の通知「保育所保育指針の適用に際しての留意事項について」(平成30年3月30日 子保発0330第2号)が定めています。

毎年書いているのに、「どこまで書いてよいのか」「保護者の同意は要るのか」「いつまで取っておくのか」が園の中で人によって違う、ということはよくあります。この記事では、通知と別添1「保育所児童保育要録に記載する事項」にもとづいて、書き方と送付・保存のルールを整理します。


1. 要録の位置づけと基本のルール

誰が、誰について作るか

通知は、作成・送付・保存について次の3点を示しています。

項目通知の内容
作成の対象最終年度(小学校就学の始期に達する直前の年度)の子ども
作成者施設長の責任の下、担当の保育士が記載する
送付就学に際して、抄本または写しを就学先の小学校の校長に送付する
保存原本等を、その子どもが小学校を卒業するまでの間保存することが望ましい

様式は国が一律に決めているのではなく、市区町村が別紙の「様式の参考例」を参考に作り、管内の保育所に配ります。まず市区町村の様式と送付の手順を確かめてから書き始めます。

保育所型認定こども園の場合

保育所型認定こども園は、市区町村と相談のうえ、「認定こども園こども要録」を作ることもできます。こども要録を作った子どもについては、保育所児童保育要録を別に作る必要はありません。


2. 記載する事項

通知の別添1が定める記載事項は、大きく2つに分かれます。

入所に関する記録

  1. 児童の氏名、性別、生年月日及び現住所
  2. 保護者の氏名及び現住所
  3. 児童の保育期間(入所及び卒所年月日)
  4. 児童の就学先(小学校名)
  5. 保育所名及び所在地
  6. 施設長及び担当保育士氏名

保育に関する記録

保育に関する記録は、園で作ってきた様々な記録をもとに、最終年度の1年間の保育の過程と子どもの育ちを要約するものです。保育所の保育は養護と教育を一体的に行うことが特性なので、養護のねらいと内容を踏まえた保育の姿も念頭に置いて書きます。

欄何を書くか(別添1)
最終年度の重点年度当初に、全体的な計画にもとづき長期の見通しとして設定したもの
個人の重点1年間を振り返って、その子どもの指導について特に重視してきた点
保育の展開と子どもの育ち指導の過程と子どもの発達の姿、就学後の指導に必要な配慮事項
特に配慮すべき事項健康の状況など、就学後の指導で配慮が必要なこととして特記すべきことがある場合
最終年度に至るまでの育ちに関する事項入所時から最終年度までの育ちのうち、最終年度の姿を理解するうえで特に重要なこと

3. 欄ごとの書き方

最終年度の重点:クラスで共通

年長クラスの年間指導計画で、年度当初に立てた長期のねらいを書きます。クラスの子どもで共通になるのが普通です。年度の終わりに後から作るのではなく、4月の計画から写すので、年度当初の計画が要録の出発点になります。

個人の重点:その子に何を大事にしてきたか

1年を振り返って、その子どもの指導で特に重視してきた点を書きます。「友だちの思いに気づいて、自分の気持ちと折り合いをつけられるように」のように、保育士が何を意図して関わってきたかが分かる書き方にします。

保育の展開と子どもの育ち:いちばん重い欄

別添1は、この欄について次の3点を求めています。

  • 5領域のねらいを視点にする:保育所保育指針第2章の各領域(健康・人間関係・環境・言葉・表現)のねらいを視点として、その子どもの発達の実情から向上が著しいと思われるものを書く
  • 比較や評定で捉えない:他の子どもとの比較や、一定の基準に対する達成度の評定で捉えるものではない
  • 「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」を活用する:指針第1章に示された10の姿を手がかりに、育まれている資質・能力を捉え、指導の過程と育ちつつある姿を分かりやすく書く

10の姿は、健康な心と体、自立心、協同性、道徳性・規範意識の芽生え、社会生活との関わり、思考力の芽生え、自然との関わり・生命尊重、数量や図形・標識や文字などへの関心・感覚、言葉による伝え合い、豊かな感性と表現です。別添1は、これらが到達すべき目標ではないこと、項目別に書くのではなく、全体的かつ総合的に捉えて書くことに留意するよう求めています。10の姿を1つずつ埋めていく書き方は、趣旨から外れます。

書き方の違いを、例で比べます(いずれも書き方を示すための例です)。

避けたい書き方趣旨に沿った書き方
「クラスの中で一番早く縄跳びができるようになった」(他の子どもとの比較)「縄跳びに繰り返し挑戦し、できるようになると友だちに跳び方を教える姿が見られた。保育士は、失敗しても続ける姿を認める言葉をかけてきた」
「ひらがなは全部読める」(達成度の評定)「当番活動で友だちの名前カードを読むことをきっかけに、絵本や掲示の文字に関心を持ち、自分から読もうとする姿が増えた」
「協同性:〇、思考力の芽生え:〇」(項目別の評価)遊びや生活の具体的な場面を1つか2つ取り上げ、そこに表れた育ちを文章でまとめる

小学校の先生が読んで、入学後の最初の数か月の関わりに生かせるかを基準にすると、書く場面を選びやすくなります。

特に配慮すべき事項:特記すべきことがある場合だけ

健康の状況など、就学後の指導で配慮が必要なことがある場合に書きます。食物アレルギー、慢性疾患、服薬などは、小学校での安全に直結します(保育所の食物アレルギー対応)。特記すべきことがなければ空欄で構いません。

最終年度に至るまでの育ち

入所から年長になるまでの育ちのうち、最終年度の姿を理解するうえで特に重要なことを書きます。0歳や1歳から在籍している子どもの場合でも、年ごとの出来事を並べるのではなく、年長の姿につながる経過に絞ります。


4. 特別な配慮を要する子ども・配慮が必要な家庭

障害や発達上の課題がある子ども

通知は、障害や発達上の課題があるなど特別な配慮を要する子どもについて、診断名や障害の特性だけでなく、その子どもが育ってきた過程を、生活上の課題や人との関わりの困難に応じて行ってきた保育の工夫と配慮を踏まえて書くよう求めています。

あわせて、保育所や児童発達支援センターなどで行われてきた支援が就学後も続くように、保護者の意向と個人情報の取扱いに留意しながら、必要に応じて保育所での支援の情報を小学校と共有することが考えられる、としています。

配偶者からの暴力の被害者と同居する子ども

要録を通じて就学先の小学校名や所在地が加害者に伝わるおそれがある場合は、文部科学省の通知「配偶者からの暴力の被害者の子どもの就学について」(平成21年7月13日)を参考に、関係機関と連携して情報を扱うよう示されています。該当する家庭があるときは、書き始める前に市区町村の担当課に相談します。


5. 保護者への説明と個人情報

保護者の同意は必要か

私立の保育所は個人情報保護法の個人情報取扱事業者にあたり、個人データを第三者に提供するときは原則として本人の同意が要ります。ただし通知は、保育所保育指針第2章4(2)ウにもとづいて要録を送付する場合は法令に基づく場合に該当し、保護者の同意は不要としています。通知が引いている条番号(第23条第1項第1号)は、その後の法改正で現在は第27条第1項第1号になっています。

公立の保育所の取扱いは、設置している市区町村の定めに従います。

それでも保護者には知らせておく

同意が不要でも、通知は、保護者との信頼関係を基盤として保護者の思いを踏まえて書くこと、送付することを入所時や懇談会などで保護者に周知しておくことが望ましいとしています。要録は保護者から開示を求められることもあるため、保護者が読んでも誤解のない書き方を心がけます。


6. 送付と保存

送付

  • 送るのは抄本または写しで、原本は園に残します
  • 宛先は就学先の小学校の校長です。就学先が決まったら、名簿で子どもごとの送付先を確かめます
  • 特別支援学校の小学部や義務教育学校の前期課程に進む子どもも、送付の対象です
  • 送付の期日と方法(郵送、持参、電子での送付など)は、市区町村の案内に従います

保存

原本等は、その子どもが小学校を卒業するまでの間保存することが望ましいとされています。年長で作成した要録は、卒所からおよそ6年間残すことになります。ほかの書類の保存年限とあわせて、保育所の書類の保存期間で整理しています。

ICT で作る・送る・保存する

通知は、保育士の専門性の向上と負担の軽減の観点から、情報の適切な管理を図りつつ、情報通信技術を活用して要録の作成・送付・保存を行うことは現行の制度上も可能としています。日々の記録を保育業務支援システムに入れている園では、1年分の記録を見返しながら要録の下書きを作れるため、年度末の負担が大きく変わります(保育の ICT 化の進め方)。電子で送る場合は、市区町村と小学校が受け取れる方法かを事前に確かめます。


7. 年間の段取り

要録は3月にまとめて書くと、記録を探し直す時間がかかり、担任の負担が集中します。年間で次のように分けておくと、書く作業は仕上げだけになります。

時期やること
4月年間指導計画から「最終年度の重点」を確定する。入所時・懇談会で要録の送付を保護者に説明する
5月〜翌1月日々の記録と個人の記録で、その子どもの育ちが表れた場面を残しておく。期ごとの振り返りで「個人の重点」の候補を書き留める
就学先の決定後子どもごとの就学先を名簿で確かめる。配慮が必要な家庭がないか確認する
2月担任が下書きを作る。施設長・主任が読み、比較や評定の表現、診断名だけの記述がないかを確かめる
3月施設長の責任の下で確定し、抄本または写しを小学校長へ送付する。原本を保存の場所に移す

8. よくある落とし穴

  • 10の姿を項目ごとに埋める:到達目標のチェック表のような書き方になり、別添1の趣旨から外れます。場面を選んで総合的に書きます。
  • 他の子どもと比べる表現が残る:「一番」「クラスで唯一」などの言葉は、読み返しで消します。
  • 診断名だけを書く:診断名だけでは、小学校で何をすればよいかが伝わりません。園で行ってきた工夫と配慮を書きます。
  • 原本を送ってしまう:送るのは抄本か写しです。原本は園で保存します。
  • 卒所後すぐに廃棄する:原本等は、子どもが小学校を卒業するまで保存することが望ましいとされています。
  • 保護者が送付を知らない:同意は不要でも、送付することは事前に伝えておきます。

まとめ

  • 要録は、最終年度の子どもについて、施設長の責任の下で担当の保育士が書く(平成30年 子保発0330第2号)
  • 就学に際して抄本または写しを就学先の小学校長へ送り、原本等は小学校卒業まで保存することが望ましい
  • 様式は市区町村が参考例をもとに作って配る。送付の期日と方法も市区町村の案内に従う
  • 保育の展開と子どもの育ちは、5領域のねらいを視点にし、比較や評定ではなく、指導の過程と育ちつつある姿を総合的に書く
  • 私立の保育所が指針にもとづいて送る場合、保護者の同意は不要(現在の個人情報保護法 第27条第1項第1号)。ただし送付は保護者に周知しておく
  • 特別な配慮を要する子どもは、診断名だけでなく保育の工夫と配慮を書く。配偶者からの暴力が関わる家庭は市区町村と相談する

参考資料