保育中の事故防止は、園全体の「気をつけよう」だけでは進みません。国のガイドラインは、重大事故が起きやすい場面を午睡・食事・プール活動と水遊びの3つに絞っています。事故防止の中身は、この3つの場面で誰が・何を・どの間隔で確かめるかを決め、全職員が同じように動ける状態にすることです。
この記事では、こども家庭庁の令和7年の事故報告集計で事故の傾向を確かめたうえで、国の通知にもとづいて場面ごとの確認項目を整理し、確認を記録と訓練で仕組みにする方法をまとめます。安全計画そのものの作り方は保育所の安全計画で扱っているため、ここでは現場で毎日確かめる手順に絞ります。
1. 事故の傾向を数字で確かめる
令和7年の事故報告
こども家庭庁「令和7年教育・保育施設等における事故報告集計」(令和8年7月公表)によると、令和7年に国へ報告された事故は3,130件でした。報告の対象は、死亡事故、意識不明の事故、治療に30日以上を要する負傷や疾病を伴う重篤な事故です。
| 区分(令和7年・全施設) | 件数 |
|---|---|
| 負傷等 | 3,129件(うち骨折 2,533件、負傷等の81.0%) |
| 死亡 | 1件(放課後児童クラブ、プール活動・水遊び中の溺死) |
| 計 | 3,130件 |
このうち認可保育所は1,313件で、内訳は骨折1,010件、意識不明3件、火傷7件、その他293件、死亡0件でした(同集計)。
年齢と場所の傾向
同集計の認可保育所の件数を年齢別に見ると、0歳0件、1歳79件、2歳135件、3歳182件、4歳279件、5歳408件、6歳230件です。年齢が上がるほど件数が増え、活動量が増える4〜5歳に集中しています。場所別では室内632件、室外551件、施設外130件で、室内でも室外と同じくらい起きています。
死亡事故はどこで起きてきたか
令和7年の認可保育所の死亡事故は0件でしたが、同集計の過去の報告件数によると、平成16年から令和7年までに報告された死亡事故は全施設で238件、うち認可保育所で69件です。死亡事故の件数は減ってきたものの、なくなってはいません。国のガイドラインが午睡・食事・水遊びを重点場面にしているのは、死亡や重い後遺症につながる事故がこの3つの場面で起きてきたためです。
つまり、事故防止は2つの層に分けて考えます。件数の多い骨折を減らすことと、件数は少なくても命にかかわる午睡・食事・水遊びの事故をゼロにすることです。
2. 午睡の確認
国が示している項目
こども家庭庁の事務連絡「教育・保育施設等における睡眠中の安全確保の徹底について」(令和6年2月8日)は、認可外保育施設で乳児がうつぶせ寝の状態で亡くなった事故を受けて、ガイドラインの睡眠中の項目を改めて周知しています。確認する点は次のとおりです。
- 医学的な理由で医師からうつぶせ寝をすすめられている場合を除き、乳児の顔が見える仰向けに寝かせる
- 一人にしない。寝かせ方に配慮し、安全な睡眠環境を整える
- やわらかい布団やぬいぐるみを使わない。ヒモやヒモ状のものを置かない
- 口の中に異物や嘔吐物がないかを確かめる
- 子どもの数や職員の数に合わせて、呼吸・体位・睡眠状態を定期的に確かめる
- 新たに気づいたリスクは記録し、職員間で共有する
こども家庭庁のミニポスター「睡眠中の事故を防ぐために」は、これに加えて、預け始めの時期は特にきめ細かく見守ること、1歳以上の子どもも発達に合わせて仰向けに寝かせること、見守りのための機器を使っていても必ず職員が見守ることを挙げています。
確認の間隔と記録
国のガイドラインは、確認の間隔を分単位では定めていません。そのため、確認の間隔は自治体の指導や園の決まりで決めるのが実際です。自治体の監査で確認の間隔や記録の書式を示している場合もあるため、所管の市町村の指導内容を確かめ、それを園の午睡チェック表に落とし込みます。
午睡チェック表には、少なくとも次の欄を用意します。
- 確認した時刻と確認した職員
- 体位(仰向け・横向き・うつぶせ)と、うつぶせを直したかどうか
- 呼吸の様子、顔色
- 気づいたこと(咳、嘔吐、寝具の乱れなど)
入園直後や長期の休み明け、体調の悪い日は、確認の間隔を短くします。午睡中に職員が休憩や記録作業に入る時間帯は、誰が部屋に残るかを交代表で決めておくと、見守りの空白が生まれません。センサーなどの機器は、職員の目視を補うものとして位置づけます。
3. 食事の確認
誤嚥による窒息
こども家庭庁の事務連絡「教育・保育施設等における食品等の誤嚥による窒息事故の防止について」(令和8年1月26日)は、節分の豆まきで炒り大豆を誤嚥し窒息したと考えられる死亡事故が過去に起きていることを挙げ、ガイドラインと消費者庁の資料を踏まえた対応を求めています。
消費者庁が令和3年1月に出した、子どもの食品による窒息・誤嚥事故への注意喚起の要点は次のとおりです。
- 豆やナッツ類など硬くてかみ砕く必要のある食品は、5歳以下の子どもには食べさせない
- ミニトマトやブドウなどの球状の食品は、4等分する、調理して軟らかくするなどして与える
- 食べるときは姿勢をよくし、食べることに集中させる。口に物を入れたまま走ったり、笑ったり、泣いたり、声を出したりさせない
- 節分の豆まきは個包装のものを使い、後片付けを徹底する
食事の場面で見ること
保育の現場で確かめるのは、食材・食べさせ方・見守りの3つです。
| 観点 | 確かめること |
|---|---|
| 食材 | 献立に窒息しやすい食材が入っていないか。入れる場合は大きさ・形・硬さを年齢に合わせて変えているか |
| 食べさせ方 | 一口の量、飲み込んだことの確認、水分を取りながら食べているか。眠くなっている子どもに無理に食べさせていないか |
| 見守り | 食事中の子どもから目を離す職員がいないか。配膳や片付けで見守りが手薄になる時間はないか |
行事食やおやつ、散歩先での飲食など、いつもと違う場面ほど危険が増えます。行事の前に、使う食材と小物(豆、あめ、小さな飾りなど)を担当者と看護師・栄養士で確かめる手順を入れておきます。こども家庭庁は令和6年度の調査研究事業で、食事中の誤嚥事故を防ぐための職員向けの啓発資料を作成しています。食物アレルギーへの対応は、生活管理指導表にもとづいて別の手順で管理します。
4. プール活動・水遊びの確認
監視を専任にする
こども家庭庁の事務連絡「教育・保育施設等におけるプール活動・水遊びの事故防止及び熱中症事故の防止について」(令和8年5月28日)は、ガイドラインにもとづき次の点を求めています。
- プール活動・水遊びを行う場合は、監視を行う者とプール指導等を行う者を分けて配置し、役割分担を明確にする
- 監視者は監視に専念し、監視エリア全域をくまなく見る
- 動かない子どもや不自然な動きをしている子どもを見つける。規則的に目線を動かしながら監視する
- 十分な監視体制を確保できない場合は、プール活動の中止も選択肢とする
- 時間的な余裕をもってプール活動を行う
- 外部の事業者に指導を委ねる場合も、役割分担や安全対策を事前に打ち合わせ、関係する全職員で共有する
- 職員に、見落としがちなリスクや監視のポイントを事前に教育し、心肺蘇生法と119番通報の実践的な訓練を行う
消費者安全調査委員会は、プールでの事故を受けて、園長用と監視者用のチェックリストと「監視のポイント」の教材を公表しています。これを夏の前の研修に使い、監視者に選ぶ職員が全員受けてから当番に入る形にすると、監視の質がそろいます。
熱中症の判断を先に決める
同じ事務連絡は、熱中症事故の防止のため、活動を中止する判断基準・判断者・伝達方法を危機管理マニュアルなどであらかじめ具体的に決めておくよう求めています。判断の基準には暑さ指数(WBGT)を使うことが考えられるとしています。
- 暑さ指数は、環境省の熱中症予防情報サイトで地域ごとの実況値・予測値を確認できる
- 熱中症警戒アラートは暑さ指数33以上、熱中症特別警戒アラートは暑さ指数35以上の見込みのときに発表される
- アラートの有無にかかわらず、実際に活動する場所の暑さ指数で危険度を把握する
園で決めておくのは、「暑さ指数が〇以上なら屋外の活動を中止する」という数値と、それを判断する職員(園長・主任など)、各クラスへの伝え方です。数値は自治体の指導や園の状況に合わせて決めます。暑くなる前からの暑熱順化、活動前後の水分補給、帽子や通気性のよい服も、あわせて手順に入れます。
5. 件数の多い骨折に備える
事故報告の8割は骨折です(令和7年の事故報告集計)。骨折は、園庭の遊具や鬼ごっこなどの戸外遊びだけでなく、室内での転倒や衝突でも起きています。こども家庭庁は令和7年度の調査研究事業で、保育の現場に合わせた骨折事故防止の啓発資料を作成しています。
骨折の対策は、午睡や水遊びのような「専任の見守り」ではなく、環境と活動の組み立てで減らします。
- 遊具・床・段差・家具の角など、けがにつながりやすい場所を定期点検の項目に入れる
- 活動量の多い時間帯(4〜5歳児の戸外遊び、ホールでの運動遊び)に、職員の立ち位置を決めておく
- 子どもの人数と遊びの内容に対して、スペースが狭すぎないかを見直す
- けがの記録から、場所・時間帯・遊びの種類の偏りを年に数回洗い出す
6. 確認を仕組みにする
役割分担を書き出す
場面ごとの確認は、担当者の経験に頼ると、休みや異動で抜けます。午睡・食事・水遊びのそれぞれについて、誰が・何を・どの間隔で確かめるかを1枚の表にまとめ、非常勤職員を含む全職員に共有します。これは安全計画の「安全点検」の柱にも当たります(保育所の安全計画)。
ヒヤリハットを集めて使う
事故にならなかった「ヒヤッとした」「ハッとした」出来事は、事故の手前で危険を知らせてくれます。国のガイドラインも、事故の発生防止のために、ヒヤリハット事例の収集と分析、職員間の共有を挙げています。
- 書く負担を小さくする(場所・時間・何が起きたか・どうしたかの4項目程度)
- 月に1回、主任や安全担当が集計し、場所や時間帯の偏りを職員会議で共有する
- 対策を決めたら、次の月にその場所の件数が減ったかを確かめる
記録と訓練を残す
午睡チェック表、プールの監視当番表、研修と訓練の記録は、指導監査で確認されることの多い書類です。事故が起きた場合の記録は、運営基準により完結の日から5年の保存が必要です(保育の記録と帳簿の保存)。監査で何を見られるかは指導監査の準備でまとめています。
7. よくある落とし穴
- 午睡の確認の記録が「形だけ」になる:時刻だけが並び、体位や呼吸の欄が空いている記録は、確認していない証拠にもなります。記録の欄を減らしてでも、毎回すべての欄を埋められる書式にします。
- 機器に任せる:睡眠センサーは見守りを補うものです。国のミニポスターも、機器の有無にかかわらず職員が見守るよう求めています。
- プールの監視者が指導や片付けを兼ねる:人数が足りない日に起きやすい抜けです。監視者を置けない日は中止すると先に決めておきます。
- 行事の日に手順が崩れる:節分・誕生会・夏祭り・散歩先での飲食など、いつもと違う日は手順を書き出して担当者を決めます。
- ヒヤリハットが集まらない:書いた職員が責められる雰囲気があると、報告は止まります。件数が多いことを「よく見ている」と評価する運用にします。
まとめ
- 国のガイドラインは、重大事故が起きやすい場面を午睡・食事・プール活動と水遊びの3つに絞っている
- 令和7年の事故報告集計では、認可保育所の報告1,313件のうち骨折が1,010件。年齢が上がるほど件数が増える
- 午睡は仰向け・一人にしない・定期的な確認と記録。確認の間隔は自治体の指導と園の決まりで決める
- 食事は、硬い豆・ナッツ類を5歳以下に食べさせない、球状の食品は小さく切る、食べることに集中させる
- 水遊びは監視者と指導者を分け、体制がとれない日は中止する。熱中症は判断基準・判断者・伝達方法を先に決める
- 確認を役割分担の表・ヒヤリハット・記録と訓練で仕組みにし、担当者が変わっても続く形にする
参考資料
- こども家庭庁 教育・保育施設等における重大事故防止対策(ガイドライン): https://www.cfa.go.jp/policies/child-safety/effort/guideline
- こども家庭庁 令和7年教育・保育施設等における事故報告集計: https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/68cc3ca7-8946-43e9-939c-5ec2113f1512/b6353351/20260727_policies_child-safety_effort_shukei_11.pdf
- こども家庭庁 教育・保育施設等における事故情報データベース: https://www.cfa.go.jp/policies/child-safety/effort/database/
- こども家庭庁 事務連絡(令和6年2月8日、睡眠中の安全確保): https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/e4b817c9-5282-4ccc-b0d5-ce15d7b5018c/f1c7d6aa/20240208_policies_hoiku_87.pdf
- こども家庭庁 ミニポスター「睡眠中の事故を防ぐために」: https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/03f45df9-97e1-4016-b0c3-8496712699a3/5e791c11/20230607_policies_child-safety_effort_guideline_05.pdf
- こども家庭庁 事務連絡(令和8年1月26日、食品等の誤嚥): https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/787dd8a4-3b44-4eed-a661-b9d0729f70c9/18c538be/20260126_policies_child-safety_effort_tsuchi_41.pdf
- 消費者庁 子どもの食品による窒息・誤嚥事故の注意喚起(令和3年1月): https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/caution/caution_047/
- こども家庭庁 事務連絡(令和8年5月28日、プール活動・水遊びと熱中症): https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/787dd8a4-3b44-4eed-a661-b9d0729f70c9/c9a7e181/20260528_policies_child-safety_effort_tsuchi_57.pdf
- 消費者安全調査委員会 プール活動・水遊びのチェックリスト(園長用): https://www.caa.go.jp/policies/council/csic/report/report_003/pdf/report_003_190617_0001.pdf
- 消費者安全調査委員会 プール活動・水遊びのチェックリスト(監視者用): https://www.caa.go.jp/policies/council/csic/report/report_003/pdf/report_003_190617_0002.pdf
- 消費者安全調査委員会 プール活動・水遊びの監視のポイント: https://www.caa.go.jp/policies/council/csic/teaching_material/pdf/teaching_material_200527_0001.pdf
- 環境省 熱中症予防情報サイト: https://www.wbgt.env.go.jp/
- 令和7年度 子ども・子育て支援調査研究事業 骨折事故防止対策の啓発資料: https://www.jeri.co.jp/report/parenting-r8/
- 令和6年度 子ども・子育て支援調査研究事業 誤嚥事故防止の啓発資料: https://www.irric.co.jp/reason/research/index.html#section5