保育所の指導計画は、保育所保育指針にもとづいて、園全体の「全体的な計画」を、年・期・月の長期的な計画と、週・日の短期的な計画へと具体化したものです。 3歳未満児については、一人一人の育ちに合わせた個別の計画を作ることが求められています。
計画は作って終わりではなく、日々の記録で保育を振り返り、自己評価を経て次の計画を直す、という循環の中で意味を持ちます。この記事では、保育所保育指針(平成29年厚生労働省告示第117号)の第1章「3 保育の計画及び評価」にもとづいて、計画の種類と書く項目、記録から改善につなぐ流れ、残し方の注意を整理します。
1. 計画の全体像
| 計画 | 作る単位 | 内容 |
|---|---|---|
| 全体的な計画 | 園全体 | 保育の方針・目標にもとづき、子どもの発達過程を踏まえて、在園期間全体の保育内容を組織的・計画的に構成する |
| 長期的な指導計画 | 年・期・月 | 子どもの生活や発達を見通し、季節や行事も踏まえたねらいと内容 |
| 短期的な指導計画 | 週・日 | 長期の計画を具体化し、日々の子どもの姿に即した活動と援助 |
| 個別的な計画 | 子ども1人 | 3歳未満児、障害のある子どもなど、一人一人に即した計画 |
全体的な計画は、子どもや家庭の状況、地域の実態、保育時間などを考慮して、長期的な見通しを持って作ることとされています。食育の計画、保健計画、安全計画なども、全体的な計画にもとづいて作ります。安全計画は「保育所の安全計画」で扱っています。
2. 指導計画で配慮する点
保育所保育指針 第1章3(2)は、指導計画の作成に当たって、次の配慮を求めています。
| 対象 | 配慮の要点 |
|---|---|
| 3歳未満児 | 生育歴、心身の発達、活動の実態などに即して、個別的な計画を作る |
| 3歳以上児 | 個の成長と、子ども同士の関係や協同的な活動が促されるよう配慮する |
| 異年齢の組・グループ | 一人一人の生活や経験、発達過程などを把握し、適切な援助や環境構成ができるよう配慮する |
| 午睡 | 安全な睡眠環境を確保し、在園時間の違いや睡眠時間の個人差に配慮して、一律とならないようにする |
| 長時間の保育 | 発達過程、生活のリズム、心身の状態に十分配慮して、保育の内容や方法、職員の協力体制を位置づける |
| 障害のある子ども | 発達過程や障害の状態を把握し、他の子どもとの生活を通して共に成長できるよう、家庭や関係機関と連携した支援の計画を個別に作るなど適切に対応する |
指導計画に書く項目の例
指導計画の様式は園ごとに決めてかまいません。多くの園で使われている項目は次のとおりです。
- 子どもの姿:前の期間の子どもの様子(計画の出発点)
- ねらい:この期間に育ってほしい心情・意欲・態度
- 内容:ねらいを達成するために子どもが経験する事柄
- 環境構成:場所、物、時間、人の配置
- 保育士等の援助・配慮:予想される子どもの姿に対する関わり
- 家庭との連携:保護者と共有すること
- 評価・反省:計画の終わりに、ねらいに照らして振り返る欄
3. 計画の展開と記録
保育所保育指針 第1章3(3)は、指導計画の展開に当たって、施設長・保育士など全職員の適切な役割分担と協力、子どもの自発的な活動への援助、そして保育の過程の記録と、それを通じた振り返りによる改善を求めています。
記録の種類
| 記録 | 内容 | 主な用途 |
|---|---|---|
| 保育日誌 | クラスの1日の活動と子どもの様子 | 短期の計画の評価、職員間の引き継ぎ |
| 個人記録(経過記録) | 子どもごとの発達や生活の様子 | 個別的な計画、保護者との面談、保育要録 |
| 連絡帳 | 家庭との日々のやりとり | 家庭との連携、健康状態の把握 |
| 午睡・食事・健康の記録 | 睡眠のチェック、食事の量、体温など | 安全管理、事故の防止 |
| 事故・ヒヤリハットの記録 | 事故や危うかった場面 | 安全計画の見直し |
記録は、子どもの姿を事実として書く部分と、保育士の解釈や次の手立てを書く部分を分けると、振り返りに使いやすくなります。個人記録は、年度末の保育所児童保育要録の作成にもつながります。
4. 評価と計画の改善
保育所保育指針 第1章3(4)(5)は、2つの自己評価と、評価を踏まえた計画の改善を定めています。
| 評価 | 内容 |
|---|---|
| 保育士等の自己評価 | 指導計画と保育の記録を通して自らの保育実践を振り返り、専門性の向上と保育実践の改善に努める |
| 保育所の自己評価 | 保育の計画の展開や保育士等の自己評価を踏まえ、保育の質の向上を図るため、保育内容等の改善を図る。結果は公表するよう努める |
評価の結果を踏まえて、全体的な計画と指導計画を見直し、全職員が共通理解を持って取り組むことで、計画・実践・評価・改善の循環を作ります。こども家庭庁は、自己評価の進め方を「保育所における自己評価ガイドライン」にまとめています。
5. 残し方と監査の備え
指導監査では、全体的な計画・指導計画・保育の記録がそろっているか、計画と実際の保育がつながっているかを確かめられることが多くあります。監査の準備は「保育所の指導監査の準備」で整理しています。
残し方のチェックリスト
- 全体的な計画から、年・月・週の指導計画まで、つながりが読み取れる
- 3歳未満児全員に、個別的な計画がある
- 障害のある子どもに、家庭や関係機関と連携した個別の計画がある
- 計画ごとに評価・反省の欄が埋まっている
- 年度・クラス・子どもごとに、計画と記録をすぐ出せる
- 保育所の自己評価を行い、結果の公表の方法を決めている
ICT で残すときの注意
計画と記録を ICT で作ると、前の期間の子どもの姿や記録を引用しやすくなり、転記の手間が減ります。一方で、次の点には注意が必要です。
- 職員ごとの閲覧・編集の権限を決め、子どもの個人情報に触れる範囲を絞る
- 記録を後から直した場合に、いつ誰が直したかが分かる設定にする
- システムを乗り換えるときに、過去の記録を書き出せるかを事前に確かめる
1歳児配置改善加算や保育ICT推進加算では、職員間で情報を共有・更新できる計画・記録の機能が、ICT の要件を満たす機能の1つとして挙げられています。詳しくは「保育の ICT 化」を参照してください。
6. まとめ
- 指導計画は、全体的な計画を長期・短期の計画へ具体化したもの。3歳未満児は個別的な計画を作る
- 計画の展開では、記録を通じた振り返りと改善が求められる
- 保育士等と保育所の2つの自己評価を踏まえて、計画を見直す循環を作る
様式や記録の方法は、市町村の指導や監査の方針によって求められる内容が違うことがあります。所在地の自治体の案内もあわせて確かめてください。
参考資料
- 保育所保育指針(平成29年厚生労働省告示第117号)(厚生労働省 法令等データベース): https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00010450&dataType=0&pageNo=1
- こども家庭庁「保育所保育指針解説(分割版)」: https://www.cfa.go.jp/policies/hoiku/shishin-h30-bunkatsu
- こども家庭庁「保育所における自己評価ガイドライン」ほか(保育の質の向上の掲載ページ): https://www.cfa.go.jp/policies/hoiku