保育士の求人を出しても応募が来ないとき、多くの園は求人サイトを増やしたり、掲載の枠を大きくしたりします。けれども、応募が少ないのか、面接のあとで辞退されているのか、入ってすぐ辞めているのかで、直すところはまったく違います。出す先を増やす前に、どこで止まっているかを数えることから始めます。

この記事では、採用の経路ごとの特徴、職業安定法で求人票に書くことが決まっている項目、書いてはいけないこと、応募への返事と見学の整え方、採用が決まったときに確かめることを、法令の決まりに沿って整理します。


まず数えること:経路ごとに、応募から 90 日後まで

最初に、直近 1 年の採用を、経路ごとに次の表に書き出します。記録が無ければ、今日から付け始めます。

経路応募面接内定入職入職後 90 日の在籍
ハローワーク
求人サイト
職業紹介事業者
養成校(実習の受け入れを含む)
職員からの紹介
園のホームページ

表が埋まると、止まっている段が見えます。

  • 応募が少ない … 求人票の条件が伝わっていないか、経路が合っていない。この記事の「求人票に書くこと」から直します
  • 面接や内定のあとで辞退される … 返事が遅い、見学で聞いた話と求人票が違う、などが多い原因です。「応募への返事と見学」を直します
  • 入職して 90 日以内に辞める … 求人票や面接で伝えた働き方と、実際の働き方がずれています。求人票の書き方と、入職後の受け入れの両方を直します

経路ごとにかかった費用(掲載料・紹介の手数料など)も並べておくと、1 人の採用にいくらかかったかを経路どうしで比べられます。


採用の経路と特徴

経路特徴確かめること
ハローワーク求人の掲載と紹介は無料。求人票の項目が法令の明示事項に沿って作られている求人票の内容を、園の実際の働き方に合わせて更新しているか
保育士・保育所支援センター都道府県や市が設けている、保育士の就職を支える窓口(保育士人材バンクなどの名前のこともある)。潜在保育士の再就職の相談を受けている住んでいる地域の窓口と、求人の出し方
養成校保育士養成施設への求人。実習を受け入れた学生が応募することが多い実習の受け入れの体制と、実習生への説明
求人サイト掲載料の形(掲載の期間・応募の数・採用の数など)はサイトごとに違う掲載の条件と、掲載をやめたあとも古い求人が残らないか
職業紹介事業者求職者を紹介し、採用が決まると手数料がかかる厚生労働大臣の許可を受けているか、手数料と返金の決まり
職員からの紹介働き方を知っている人からの紹介なので、入職後のずれが少ない紹介した職員へのお礼の払い方(下で説明)

職業紹介事業者を使うとき

有料の職業紹介を行うには厚生労働大臣の許可が要ります。契約の前に、ハローワークの「人材サービス総合サイト」で、許可番号と事業所の情報を確かめます。医療・介護・保育の分野には、法令を守って適正に事業を行う紹介事業者を認定する制度もあります。

契約の前に、手数料の決め方と、入職した人が短い期間で辞めたときの返金の決まりを書面で確かめておきます。手数料の額は事業者と条件によって違うので、複数の事業者の条件を並べて比べ、上の表の「1 人の採用にかかった費用」と合わせて見ます。

職員からの紹介にお礼を払うとき

職員に「知り合いの保育士を紹介してほしい」と頼み、採用が決まったらお礼を払う園があります。職業安定法第40条は、募集を行う者が、募集に従事する自分の被用者に、賃金・給料その他これらに準ずるもの以外の報酬を与えることを禁じています。お礼を払うなら、賃金規程に紹介の手当として定め、給与として支払う形にしておきます。現金や商品券をその場で渡す形は避けます。


求人票に書くこと(職業安定法の明示事項)

職業安定法第5条の3は、労働者の募集を行う者に、応募しようとする人に対して業務の内容・賃金・労働時間その他の労働条件を明示することを求めています。書く項目は、職業安定法施行規則第4条の2第3項に並んでいます。

項目保育園での書き方の例
従事すべき業務の内容(変更の範囲を含む)「0〜2歳児クラスの保育」。変更の範囲は「法人が運営する保育所での保育業務」など
労働契約の期間期間の定めなし/1 年ごとの契約、など
試みの使用期間試用期間の有無と長さ、その間の条件
有期労働契約を更新する場合の基準更新の有無、更新の判断の基準、通算期間や更新回数に上限があればその上限
就業の場所(変更の範囲を含む)園の名前と所在地。変更の範囲は「法人が運営する〇〇市内の保育所」など
始業・終業の時刻、時間外労働の有無、休憩、休日シフトの種類ごとの時刻(早番 7:00〜16:00 など)、行事での休日出勤の有無
賃金基本給と手当の内訳。手当ごとに、毎月支払うものかどうか
社会保険・労働保険の適用健康保険・厚生年金・労災保険・雇用保険の適用
雇用しようとする者の氏名または名称運営法人の名前
受動喫煙を防止するための措置敷地内禁煙など

明示は、書面の交付か、応募者が希望したときは電子メールなどで行います(同条第4項)。

保育園の求人で書き漏れやすいこと

  • シフトの時刻 … 「7:00〜20:00 のうち 8 時間のシフト制」だけでは、早番・遅番の回数が分かりません。シフトの種類と、1 か月に何回くらい入るかの目安を書きます
  • 持ち帰りの仕事と行事の準備 … 時間外労働の有無には、行事の準備や書類の作業も含めて実際の姿を書きます
  • 賃金の内訳 … 処遇改善等加算による賃金改善を手当で払っているのか、基本給に入れているのかで、応募する人の受け止め方が変わります。加算のしくみは保育の処遇改善等加算で整理しています
  • 担当するクラスと配置 … 何歳児のクラスを何人で見るのか、フリーの保育士がいるのか

求人の情報を正確で最新に保つ

職業安定法第5条の4は、求人の広告などで虚偽の表示や誤解を生じさせる表示をしてはならないとし、募集を行う者に、情報を正確かつ最新の内容に保つことを求めています。

  • 採用が決まって募集を終えたら、ハローワーク・求人サイト・ホームページの求人を同じ日に取り下げる
  • 賃金や時間を変えたら、すべての掲載先を同じ日に直す
  • 「残業なし」「持ち帰りなし」は、実際にそうなっているときだけ書く

面接の途中で、求人票に書いた条件を変えて契約する場合は、契約を結ぶ前に、変える内容を応募者に明示します(同法第5条の3第3項)。契約を結ぶときは、労働基準法第15条にもとづき、労働条件通知書などで労働条件を明示します。


書いてはいけないこと

性別を限る書き方

男女雇用機会均等法第5条は、募集と採用について、性別にかかわりなく均等な機会を与えることを求めています。「女性保育士募集」「女性が活躍中なので女性歓迎」のように、性別を限ったり、一方を優先したりする書き方はしません。

年齢を限る書き方

労働施策総合推進法第9条は、募集と採用について、年齢にかかわりなく均等な機会を与えることを求めています。例外は同法施行規則第1条の3に限って並んでいて、たとえば次のような場合です。

  • 定年の年齢を下回ることを条件に、期間の定めのない契約で募集するとき
  • 長い期間の勤続で能力を伸ばすことを目的に、若い人を、期間の定めのない契約で、職業の経験を条件にせずに募集するとき

例外を使うときは、どの例外にあたるのかを求人票に書いておきます。「30 歳くらいまでの方」のように、例外にあたらないまま年齢を限る書き方はしません。


応募への返事と見学

求人票を直しても、応募したあとで待たされると、応募者は先に返事をくれた園に決めます。

  • 応募にはその日のうちに返す … 返す人と文面を先に決めておきます。園長が保育に入っている日でも、事務の担当が一次の返事を出せるようにします
  • 見学で保育の様子を見せる … 保育室と、保育をしている時間の様子を見てもらいます。質問に答える人(主任など)を決めておきます
  • 面接で伝えることを求人票とそろえる … シフト・行事・持ち帰りの仕事について、面接で話す内容が求人票と違うと、入職後のずれになります
  • 選考の日程を短くする … 見学・面接・内定の間を空けすぎないようにします

保護者向けの見学の段取りは見学対応の進め方で扱っていますが、採用の見学でも、予約から当日の案内、その後の連絡までの流れは同じ考え方で組めます。

園のホームページに採用のページを置くときは、求人票と同じ条件を、同じ日に更新します。ホームページに載せる情報の整え方は保育園のホームページに載せる情報にまとめました。キャリアアップ研修と処遇改善で賃金がどう上がっていくかを示せると、長く働くつもりの人に伝わります。研修の計画は保育士等キャリアアップ研修の計画と運用を参考にしてください。


採用が決まったときに確かめること

  • 保育士登録を受けているか … 保育士として働くには、都道府県の保育士登録簿に登録を受けている必要があり、登録すると保育士登録証が交付されます(児童福祉法第18条の18)。保育士でない者が保育士の名称を使うことは禁じられています(同法第18条の23)。登録証の原本を確かめ、写しを保管します
  • データベースを活用する … 国は、児童生徒性暴力等を行ったことで保育士登録を取り消された人などの情報をデータベースに整えていて、保育士を雇用しようとする者は、このデータベースを活用するものとされています(児童福祉法第18条の36第3項)。使い方は、こども家庭庁と都道府県の案内で確かめます
  • こども性暴力防止法への備え … 「学校設置者等及び民間教育保育等事業者による児童対象性暴力等の防止等のための措置に関する法律」は、2026 年 12 月 25 日に施行されます。認可保育所などは、職員を業務に就かせる前に犯罪事実の確認などを行う対象になります。採用の流れのどこで確認を行うかを、施行の前に決めておきます
  • 労働条件通知書を渡す … 求人票と面接で伝えた条件と同じ内容かを、契約の前に見直します

実行時の落とし穴

  • 出す先を増やすことから始める。どこで止まっているかを数えないまま掲載を増やすと、費用だけが増えます。まず経路ごとに応募から 90 日後の在籍までを数えます。
  • 募集を終えた求人を残したままにする。採用が決まったあとも古い条件の求人が残ると、職業安定法第5条の4の「正確かつ最新」に反し、応募者との行き違いにもなります。
  • シフトや持ち帰りの仕事を書かない。入職後に「聞いていた話と違う」となり、90 日以内の退職につながります。
  • 性別や年齢を限る。「女性歓迎」「30 歳くらいまで」は書きません。
  • 職員への紹介のお礼を、その場で現金や商品券で渡す。賃金規程に手当として定め、給与として払います。
  • 紹介事業者の許可を確かめずに契約する。人材サービス総合サイトで許可番号を確かめ、手数料と返金の決まりを書面で確かめます。

まとめ

  1. 採用の経路ごとに、応募・面接・内定・入職・90 日後の在籍を数え、止まっている段を見つける。
  2. 求人票には、職業安定法施行規則第4条の2第3項の項目を、シフトの時刻・賃金の内訳・担当するクラスまで実際の姿で書く。
  3. 性別や年齢を限る書き方をしない。年齢の例外を使うときは、どの例外にあたるかを書く。
  4. 求人の情報は、すべての掲載先で正確かつ最新に保ち、募集を終えたら同じ日に取り下げる。
  5. 応募にはその日のうちに返し、見学で保育の様子を見せ、面接で伝える条件を求人票とそろえる。
  6. 採用が決まったら、保育士登録証を確かめ、データベースを活用し、こども性暴力防止法の施行に備えて確認の手順を決めておく。

参照した資料