保育所の分園は、中心となる保育所(中心保育所)の施設長のもとで一体的に運営する、小さな保育の拠点です。 定員は1か所あたり原則30人未満で、中心保育所から通常の交通手段で30分以内の距離が目安とされています。
分園は、保育所の新設が難しい地域で保育の受け皿を確保するための仕組みとして、「保育所分園の設置運営について」(平成10年4月9日児発第302号、厚生省児童家庭局長通知)で定められました。待機児童の多い都市部だけでなく、子どもの数が減った地域で、小さな拠点を残す方法としても使われています。この記事では、この通知と、こども家庭庁の公定価格の留意事項通知にもとづいて、設置の要件と手続きを整理します。
1. 分園とは
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 位置づけ | 中心保育所と一体的に運営する保育所の一部 |
| 目的 | 保育所の設置が難しい地域で保育の実施を進める |
| 設置運営主体 | 中心保育所を設置・経営している者(地方公共団体、社会福祉法人など) |
| 定員 | 1か所あたり原則30人未満 |
| 中心保育所との距離 | 通常の交通手段で30分以内が目安 |
| 管理 | 中心保育所の施設長の管理のもとで一体的に運営する |
保育所を経営していない者が分園だけを設けることはできません。 新たに保育を始める場合は、保育所の新設か、小規模保育事業などの地域型保育事業を検討することになります。事業の種類と始め方は「保育所の開園の流れ」と「小規模保育事業の始め方」で扱っています。
定員30人以上の場合
通知では、中心保育所の規模や中心保育所との距離などから一体的な運営が可能な場合は、30人以上の定員とすることもできるとされています。30人以上の分園を考えるときは、事前に都道府県(指定都市・中核市はその市)と市町村に相談します。
2. 職員と設備
職員
中心保育所と分園は、それぞれ児童福祉施設の設備及び運営に関する基準(都道府県等の条例)を満たす職員を置く必要があります。ただし、次の職員は中心保育所に置いていれば分園には置かなくてよいとされています。
| 職員 | 分園での扱い |
|---|---|
| 施設長 | 中心保育所の施設長が分園も管理する |
| 保育士 | 年齢別配置基準を満たす数。分園には常時2人以上の保育士を置く |
| 嘱託医 | 中心保育所に置いていれば不要 |
| 調理員 | 中心保育所などから給食を搬入する場合は不要 |
設備
分園の設備も、条例の基準を満たす必要があります。ただし、調理室と医務室は、中心保育所にあれば分園には設けなくてもよいとされています。給食を中心保育所から運ぶ場合は、運搬の方法と時間、衛生管理の手順を決めておきます。
土地と建物は、所有しているか、継続的に借りられることが必要です。賃貸物件の場合は、契約期間と更新の条件を確かめます。
3. 公定価格での扱い
こども家庭庁の「特定教育・保育等に要する費用の額の算定に関する基準等の実施上の留意事項について」(最終改正 令和8年4月8日)の別紙2(保育所)では、分園について次のように定めています。
| 項目 | 扱い |
|---|---|
| 定員区分 | 基本分単価、処遇改善等加算(区分1・区分2)、施設長を配置していない場合の調整は、中心園と分園それぞれの利用定員に応じた区分を当てはめる |
| 分園の場合の調整 | 分園に適用される基本分単価と処遇改善等加算(区分1・区分2)の合計に、地域区分等に応じた調整率を掛けた額で調整する(加減調整部分) |
| 職員の充足 | 施設長を除く職員を充足する。嘱託医は中心園に置いているので不要。調理員は中心園などから給食を搬入する場合は不要 |
定員区分は利用定員が小さいほど子ども1人あたりの単価が高くなる仕組みですが、分園には調整が掛かります。分園を設けたときの収入の見込みは、市町村の単価表で中心園と分園を分けて計算します。公定価格の構成は「公定価格の仕組み」を参照してください。
4. 設置までの順番
- 市町村の保育の需要を確かめる:市町村の子ども・子育て支援事業計画で、その地域に受け皿を増やす計画があるかを確かめます。計画にない地域では、認可や利用定員の設定が難しい場合があります。
- 物件を探す:中心保育所から通常の交通手段で30分以内、分園の定員に見合う面積、2方向の避難経路などの条件を確かめます。
- 都道府県・市町村に事前相談する:認可の担当(都道府県など)と、利用定員の確認の担当(市町村)の両方に相談します。
- 整備と職員の確保:改修の計画と、分園に常時2人以上の保育士を置ける職員体制を作ります。
- 認可の申請と利用定員の確認:保育所の定員の変更として認可の手続きを行い、市町村から利用定員の確認を受けます。
手続きの様式や、分園を保育所の定員の変更として扱う方法は、都道府県などによって違います。必ず事前相談で確かめてください。
5. 検討の注意点
- 職員の移動の負担:中心保育所と分園の間で職員が行き来する場合、移動時間も勤務時間に入ります。シフトを組むときに見込んでおきます。
- 給食の搬入:調理員を置かない場合、運搬中の温度管理と、アレルギー対応の食事の取り違えを防ぐ手順が必要です。
- 災害時の対応:分園単独での避難と、中心保育所への連絡の手順を、安全計画と業務継続計画に入れておきます。
- 将来の子どもの数:地域の子どもが減ると、分園の利用が先に落ちることがあります。利用定員の見直しの手続きも確かめておきます。
検討のチェックリスト
- 市町村の事業計画で、その地域に受け皿を増やす計画がある
- 物件が中心保育所から通常の交通手段で30分以内にある
- 分園に常時2人以上の保育士を置く勤務表が組める
- 給食の搬入と衛生管理の方法を決めた
- 中心園と分園に分けた公定価格の収入の見込みを作った
6. まとめ
- 分園は、中心保育所を経営している者が、中心園と一体的に運営する小さな拠点。保育所を経営していない者は設けられない
- 定員は原則30人未満、中心園から通常の交通手段で30分以内が目安
- 嘱託医・調理員、調理室・医務室は中心園にあれば分園に置かなくてもよい
- 公定価格では、中心園と分園それぞれの利用定員で定員区分を当てはめ、分園には調整が掛かる
設置の可否と手続きは、都道府県・市町村の判断と運用によります。検討の早い段階で自治体に相談してください。
参考資料
- 厚生省児童家庭局長通知「保育所分園の設置運営について」(平成10年4月9日児発第302号)(厚生労働省 法令等データベース): https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00ta9230&dataType=1&pageNo=1
- こども家庭庁「特定教育・保育等に要する費用の額の算定に関する基準等の実施上の留意事項について」(改正後全文): https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/3a1576c7-071d-4325-8be8-edced6d12ee1/29277d03/20260727_policies_kokoseido_202.pdf
- こども家庭庁「子ども・子育て支援制度」: https://www.cfa.go.jp/policies/kokoseido