企業主導型保育事業は、企業が従業員の働き方に合わせた保育施設を設け、運営費と整備費について認可施設並みの助成を受けられる仕組みです。 平成28年度に創設され、子ども・子育て支援法第59条の2の「仕事・子育て両立支援事業」に位置づけられています。財源は、厚生年金保険の事業主などから徴収する事業主拠出金です(同法第69条)。
認可保育所と違い、市町村の利用調整を経ずに施設と利用者が直接契約し、夜間や土日など多様な働き方に合わせた運営ができます。一方で、児童福祉法上は認可外保育施設にあたるため、届出や指導監督の仕組みは認可外保育施設と共通です。この記事では、こども家庭庁と実施機関の公益財団法人児童育成協会の公表資料にもとづいて、仕組みと検討の順番を整理します。
1. 仕組みの全体像
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 根拠 | 子ども・子育て支援法第59条の2(仕事・子育て両立支援事業) |
| 財源 | 事業主拠出金(同法第69条) |
| 実施機関 | 公益財団法人児童育成協会(助成の審査・決定、指導・監査) |
| 利用の契約 | 施設と利用者の直接契約 |
| 対象の子ども | 従業員の子ども(従業員枠)と、地域の子ども(地域枠。利用定員の50%以内) |
| 助成 | 運営費・整備費(認可施設並み)、施設利用給付費など |
| 児童福祉法上の位置づけ | 認可外保育施設(届出と指導監督基準の対象) |
複数の企業が共同で設置することもでき、保育事業者が施設を設け、複数の企業が利用の契約を結ぶ形もあります。
2. 認可保育所・事業所内保育事業との違い
| 比べる点 | 企業主導型保育事業 | 認可保育所 | 事業所内保育事業(地域型保育) |
|---|---|---|---|
| 児童福祉法上 | 認可外保育施設 | 認可施設 | 市町村の認可事業 |
| 給付・助成 | 運営費・整備費の助成(児童育成協会) | 委託費(市町村) | 地域型保育給付費(市町村) |
| 利用の決め方 | 施設との直接契約 | 市町村の利用調整 | 従業員枠は事業者、地域枠は市町村の利用調整 |
| 指導・監査 | 児童育成協会の監査と、都道府県等の指導監督 | 都道府県等・市町村 | 市町村 |
事業所内保育事業は、市町村の認可を受ける地域型保育事業の1つです。認可の事業として始めるか、企業主導型保育事業として始めるかで、手続きの相手と、運営の自由度が変わります。地域型保育事業の基準は「小規模保育事業の始め方」で整理しています。
3. 助成の中身
| 助成 | 内容 |
|---|---|
| 運営費 | 保育士の人件費などの運営にかかる費用を、定員・年齢・開所時間などに応じて助成する |
| 整備費 | 施設の新設・改修にかかる費用を助成する(新規の公募で採択された場合) |
| 施設利用給付費 | 幼児教育・保育の無償化の対象となる利用料に相当する部分を、施設に給付する |
助成の単価と要件は、毎年度の「企業主導型保育事業費補助金実施要綱」と、児童育成協会の助成要領で定められます。令和8年度の助成要領は、児童育成協会の企業主導型保育事業ポータルで公表されています。
4. 届出と監査
企業主導型保育施設は、児童福祉法上の認可外保育施設なので、開設から1か月以内に都道府県知事等へ届け出て、認可外保育施設指導監督基準にもとづく立入調査を受けます。届出と開設後の義務は「認可外保育施設の届出」で扱っています。
これに加えて、児童育成協会が助成の適正な執行のために指導・監査を行い、その結果を公表しています。助成を受ける施設は、自治体の指導監督と児童育成協会の監査の両方を受けると考えておきます。
あわせて、令和7年10月からは、保育所等と同じく企業主導型保育施設を含む認可外保育施設も、職員による虐待の通報義務の対象になっています。詳しくは「不適切な保育と虐待の防止」を参照してください。
5. 検討の順番
- 公募の状況を確かめる:新規の施設の助成は、年度ごとに公募の有無・時期・条件が示されます。児童育成協会のポータルとこども家庭庁の案内で、最新の公募を確かめます。
- 従業員の利用の見込みを数える:従業員の子どもの年齢と人数、勤務の時間帯から、従業員枠の定員と開所時間を見込みます。
- 地域の需要を確かめる:地域枠を設ける場合、所在地の市町村の待機児童や保育の受け皿の状況を確かめます。市町村の子ども・子育て支援事業計画との関係も見ておきます。
- 運営の形を決める:自社で運営するか、保育事業者に委託するかを決めます。委託する場合は、事業者の運営実績と監査の結果を確かめます。
- 職員と設備を計画する:保育従事者と保育士の配置、設備の面積や避難経路を、助成要領と指導監督基準の両方に合わせます。
- 申請・審査を受ける:公募の要件にそって申請し、審査を受けます。
チェックリスト
- 最新年度の公募の有無と条件を確かめた
- 従業員枠の利用の見込みを、年齢・時間帯ごとに数えた
- 地域枠を利用定員の50%以内で設計した
- 助成要領と認可外保育施設指導監督基準の両方で、職員と設備を確かめた
- 開設から1か月以内の届出と、年1回の運営状況の報告の予定を立てた
6. まとめ
- 企業主導型保育事業は、子ども・子育て支援法第59条の2の事業で、事業主拠出金を財源に運営費・整備費を助成する
- 児童福祉法上は認可外保育施設で、直接契約。地域枠は利用定員の50%以内
- 自治体への届出・指導監督と、児童育成協会の監査の両方を受ける
- 新規の助成は年度ごとの公募による。検討を始めたら最初に公募の状況を確かめる
助成の単価と要件は年度ごとに変わります。必ず最新の実施要綱・助成要領と、児童育成協会の案内を確かめてください。
参考資料
- 子ども・子育て支援法(平成24年法律第65号)第59条の2・第69条(e-Gov 法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/424AC0000000065
- こども家庭庁「仕事・子育て両立支援事業(企業主導型保育事業 等)」: https://www.cfa.go.jp/policies/kokoseido/ryouritsu/
- 公益財団法人児童育成協会「企業主導型保育事業ポータル 制度紹介」: https://www.kigyounaihoiku.jp/comp_top/institution
- 公益財団法人児童育成協会「企業主導型保育事業ポータル 通知等」: https://www.kigyounaihoiku.jp/grant_top/notification