主任保育士専任加算は、代替保育士を配置して主任保育士を保育計画の立案などの主任業務に専任させ、あわせて延長保育や一時預かりなどの事業を複数実施している施設に加算されます。 主任保育士が現場の配置に組み込まれず、職員の指導や保護者・地域からの相談に当たれる体制を、公定価格で支える加算です。

加算は、毎月の単価に上乗せされる「特定加算部分」に入り、基本額を各月初日の利用子ども数で割った額が子ども1人あたりの単価に加わります。この記事では、こども家庭庁の「特定教育・保育等に要する費用の額の算定に関する基準等の実施上の留意事項について」(最終改正 令和8年4月8日)の別紙2(保育所)にもとづいて、要件と満たせないときの扱いを整理します。認定こども園は、主幹保育教諭等の専任化について別紙4に同じ趣旨の定めがあります。


1. 加算の要件

留意事項通知 別紙2 Ⅵの1(1)の要件は、次の2つに分けて読むと分かりやすくなります。

要件内容
配置基本分単価と他の加算の認定で求められる「必要保育士数」を超えて、代替保育士を配置する
事業下の表の事業等のうち、複数を実施する

代替保育士には、都道府県の条例で保育士とみなされる者も含みます。また、この加算を受ける施設は、保護者や地域住民からの育児相談、地域の子育て支援活動に積極的に取り組むこととされています。

実施する事業等(ⅰ〜ⅶ)

番号事業等要件のポイント
ⅰ延長保育事業子ども・子育て支援交付金の要件に適合するもの、または同等の要件で自主事業として行うもの
ⅱ一時預かり事業(一般型)交付金の要件に適合し、月の平均対象子どもが1人以上
ⅲ病児保育事業交付金の要件に適合するもの、または同等の自主事業
ⅳ乳児の利用乳児が3人以上利用している
ⅴ障害児の利用障害児(軽度障害児を含む)が1人以上利用している
ⅵ災害時の対応エッセンシャルワーカーの保護者への連絡、代替の預かり先確保などの手順を定めたマニュアルを整え、原則月1回の研修・訓練を行う
ⅶ乳児等通園支援事業児童福祉法第6条の3第23項にもとづく事業(令和8年度に追加)

ⅶの乳児等通園支援事業は、令和8年度の見直しで要件に加わりました(こども家庭庁「令和8年度公定価格・基準等の見直し事項」)。事業の実施の準備は「こども誰でも通園制度とは」で扱っています。

年度を通じて満たしているとみなす定め

いくつかの事業等には、一度要件を満たすと同じ年度の中では満たしているものと扱う定めがあります。

  • 延長保育・一時預かり:要件を満たした月以降、同一年度内は、事業を実施する体制が取られていれば要件を満たしているものと扱う。一時預かりを年度当初から始める場合は、5月に要件を満たせば4月から満たしているものと扱う
  • 乳児3人以上:月の初日に乳児が3人以上利用している月から、年度を通じて満たしているものとする
  • 障害児1人以上:月の初日に障害児が1人以上利用している月から、年度を通じて満たしているものとする
  • 乳児の利用が3人を下回る園の特例:乳児の利用定員が3人以上あり、乳児保育の職員体制を維持し、地域の親子の交流の場や子育て相談会を月2回以上開いている場合は、前年度に要件を満たしていた月について、乳児3人以上の要件を満たしたものと扱う

障害児は、市町村が認める子どもで、身体障害者手帳などの有無は問いません。医師の診断書や、巡回支援専門員など専門的な知見を持つ人の意見書で確認してもよいとされています。


2. 主任保育士の兼務の制限

留意事項通知は、主任保育士がクラス担当を兼務することは適切ではないとし、代理で受け持つ場合でも1か月を超えて兼務が続くと加算は適用されないとしています。

状況扱い
主任保育士が恒常的にクラス担任を持っている加算の趣旨に合わない
欠員や休職の代わりに一時的にクラスを受け持つ1か月以内なら直ちに外れない
代理の受け持ちが1か月を超えて続く加算は適用されない

保育士の退職が重なると、主任保育士が現場に入って穴を埋める状況が起こりがちです。兼務が始まった日を記録し、1か月以内に代わりの保育士を手当てする見通しを立てておきます。派遣や短時間勤務の保育士で一時的に埋める場合も、必要保育士数を超える配置になっているかを月ごとに確かめます。


3. 認定と加算額

加算の認定は、施設が所在する市町村長が行います。申請では、次のような書類の提出を求められます。

  1. 施設名と加算の適用年月
  2. 育児相談・地域の子育て支援活動などの内容
  3. 実施している事業等の状況
  4. ⅵ(災害時の対応)を要件とする場合は、緊急時の対応に関するマニュアルなど

加算額は、基本額に処遇改善等加算(区分1・区分2)の上乗せ分を加えた額を、各月初日の利用子ども数で割った額です(10円未満の端数は切り捨て)。利用子ども数が少ない月ほど、子ども1人あたりの単価は大きくなります。単価の全体像は「公定価格の仕組み」を参照してください。


4. 要件を満たせないときの扱い

市町村長は、申請や指導監督を通じて状況を確かめ、要件に適合しなくなった場合は、適合しなくなった日の属する月の翌月から加算を適用しないものとします(月の初日に適合しなくなった場合はその月から)。

外れやすい場面は次のとおりです。

  • 代替保育士が退職し、必要保育士数を超える配置がなくなった
  • 主任保育士の代理のクラス担当が1か月を超えた
  • 実施している事業等が1つだけになった(たとえば延長保育をやめた翌年度)

指導監査では、配置の記録と、主任保育士の業務の実態を確かめられます。監査で見られる書類は「保育所の指導監査の準備」にまとめています。


5. 算定前のチェックリスト

  • 必要保育士数を超えて、代替保育士を月ごとに配置している
  • 主任保育士の勤務表で、クラス担当に入った日を記録している
  • 実施している事業等を2つ以上、根拠の書類とともに説明できる
  • 一時預かりは、月の平均対象子どもが1人以上になっている
  • 災害時の対応を要件にする場合、マニュアルと月1回の研修・訓練の記録がある
  • 育児相談や地域の子育て支援の取組みを記録している

6. まとめ

  • 主任保育士専任加算は、代替保育士を置いて主任保育士を専任させ、7つの事業等のうち複数を実施する施設に加算される
  • 主任保育士のクラス担当の兼務は、代理でも1か月を超えると加算が外れる
  • 令和8年度から、乳児等通園支援事業が事業等の要件に加わった

要件の細部は、市町村によって確認の方法が違うことがあります。算定の前に、こども家庭庁の最新の留意事項通知・FAQと、市町村の案内を確かめてください。

参考資料