保育所の建物の費用には、賃貸物件なら「賃借料加算」、自己所有の建物なら「減価償却費加算」という2つの加算があります。 どちらも公定価格の「基本加算部分」に入る加算で、基本分単価には含まれていない建物の費用を、園の状況に応じて上乗せします。

2つの加算はどちらか一方しか算定できません。どちらに当たるかは、建物が賃貸か自己所有か、そして整備のときに国の補助を受けたかで決まります。この記事では、こども家庭庁の「特定教育・保育等に要する費用の額の算定に関する基準等の実施上の留意事項について」(最終改正 令和8年4月8日)の別紙2(保育所)にもとづいて、要件と認定の手続きを整理します。認定こども園・小規模保育事業などにも同じ趣旨の定めがあるので、施設の種類に応じた別紙で確かめてください。


1. どちらの加算に当たるか

建物の状況対象になりうる加算
賃貸物件で、賃借料を払っている賃借料加算
自己所有で、建設・購入の資金が発生し、国庫補助を受けていない減価償却費加算
自己所有で、施設整備費の国庫補助を受けて建てた原則どちらも対象外(改修の特例あり)
一部が賃貸、一部が自己所有延べ面積の50%以上を占める方で判定

建物の一部が賃貸物件の場合、減価償却費加算は「自己所有の建物の延べ面積が施設全体の延べ面積の50%以上」であることが条件です。逆に一部が自己所有の場合、賃借料加算は「賃貸による建物の延べ面積が50%以上」であることが条件です。


2. 減価償却費加算の要件

留意事項通知 別紙2 Ⅲの7(1)では、次のすべてに該当する施設に加算するとしています。

要件内容
(ア)保育所の用に供する建物が自己所有であること
(イ)建物を整備・改修または取得する際に、建設資金または購入資金が発生していること
(ウ)建物の整備・改修に当たって、施設整備費・改修費等の国庫補助金の交付を受けていないこと
(エ)賃借料加算の対象となっていないこと

国庫補助で建てた園の改修の特例

施設整備費等の国庫補助を受けて建てた建物でも、整備後一定年数がたったあとに、次のすべてに該当する改修等を行った場合は、(ウ)に該当するものとして差し支えないとされています。

  1. 老朽化などを理由として、改修等が必要であったと市町村が認める
  2. その改修等に国庫補助の交付を受けていない
  3. 1施設あたりの改修等の費用を2,000で割った値が、建物全体の延べ面積に2を掛けた値を上回り、かつ改修等の費用が1,000万円以上

3つ目の条件は、たとえば延べ面積600平方メートルの園なら、600×2=1,200を上回るには改修費が2,000×1,200=240万円を超える必要がある、という計算になります。この例では1,000万円以上という条件の方が厳しくなるので、改修費は1,000万円以上が必要です。

加算額

加算額は、「標準」と「都市部」の区分に応じて定められた額です。都市部は、当年度または前年度の4月1日現在の人口密度が1平方キロメートルあたり1,000人以上の市町村をいい、それ以外が標準です。


3. 賃借料加算の要件

留意事項通知 別紙2 Ⅲの8(1)では、次のすべてに該当する施設に加算するとしています。

要件内容
(ア)保育所の用に供する建物が賃貸物件であること
(イ)その賃貸物件に対する賃借料が発生していること
(ウ)賃借料の国庫補助を受けた施設は、その補助にかかる残額が生じていないこと(「都市部における保育所への賃借料等支援事業」による国庫補助を除く)
(エ)減価償却費加算の対象となっていないこと

加算額と地域の区分

賃借料加算の額は、実際の家賃ではなく、都道府県ごとに割り当てられたa〜dの地域の区分と、市町村が都市部か標準かの組み合わせで定められた額です。家賃が高い物件でも、加算額はこの区分で決まります。自園の所在地がどの区分に当たるかは、留意事項通知の表と、市町村が配布する単価表で確かめてください。

家賃と加算額の差は、委託費の他の部分や運営費でまかなうことになります。家賃の負担が収支にどう響くかは「保育所の収支の見方」の考え方で見積もります。


4. 認定の手続き

どちらの加算も、認定は施設が所在する市町村長が行います。

加算申請で求められる主な書類
減価償却費加算施設名、加算の適用年月、建物を整備・改修または取得する際の契約書類など
賃借料加算施設名、加算の適用年月、賃貸契約書など

要件に適合しなくなった場合は、適合しなくなった日の属する月の翌月から加算が適用されなくなります(月の初日に適合しなくなった場合はその月から)。

外れる場面の例は次のとおりです。

  • 賃貸だった建物を買い取って自己所有にした(減価償却費加算の要件を満たすかを改めて確かめる)
  • 増築で自己所有部分の延べ面積が50%を超えた
  • 賃借料の国庫補助を受けていて、補助の残額が生じた

5. 開園・移転の前に確かめること

  • 建物が賃貸か自己所有か、延べ面積の割合で判定できる図面と契約書がある
  • 整備・改修に国庫補助を受けたかどうかを、補助金の交付決定通知で確かめた
  • 所在地の人口密度から、都市部か標準かを確かめた
  • 賃借料の国庫補助を受けている場合、補助の残額が生じていない
  • 加算の適用年月と申請の期限を、市町村の案内で確かめた

開園前の段階で、整備の補助を受けるか、賃貸物件で始めるかは、公定価格の加算にも影響します。整備補助と開園までの順番は「保育所の開園の流れ」で整理しています。

6. まとめ

  • 賃貸物件なら賃借料加算、国庫補助なしで整備した自己所有の建物なら減価償却費加算。両方は取れない
  • 一部が賃貸・一部が自己所有なら、延べ面積の50%以上を占める方で判定する
  • 国庫補助で建てた園でも、一定の条件を満たす改修なら減価償却費加算の対象になりうる
  • 加算額は実費ではなく、地域の区分と都市部・標準の区分で決まる

加算額は年度ごとの告示で定められます。算定の前に、こども家庭庁の最新の告示・留意事項通知と、市町村の案内を確かめてください。公定価格の全体像は「公定価格の仕組み」を参照してください。

参考資料